コラムColumn

vol.113 泉区I邸石組工事

2024/11/25

皆様こんにちは。清水園でございます。

本日お伝えして参りますのは、’泉区I邸石組工事’についての内容です。

今回の施主様は、元々ご自分で石を並べられていたそうですが、それもとうとう限界がきてしまったということで石組工事の依頼を受けました。

今回の現場であるI邸には駐車場がなく、I邸の隣にあった他人所有の駐車場を借りることができれば大きなクレーンで石を動かして楽に作業を進めることができたのですが、借りることができませんでした。そこで、人力で全ての石を動かすしかありませんでした。そこで、昔はよく使われていたチェーンブロックとコロという道具を用いて、全ての石の並べ替えを行いました。チェーンブロックとは、滑車の原理で重量物などを軽く持ち上げることができる優れもので、クレーンの入らないような狭い庭で石などの重量物を吊り上げたり運んだり設置したりする際によく使います。地面に足場板を敷き、その上に丸太や単管パイプ等のコロを並べ、コロの上にソリを載せて、その上に石や木の重量物を載せて、引きながら移動させます。

庭というのは、更地に作るのは簡単ですが、すでに置かれた石を解体しながら並べ直すのは非常に大変で地道な作業になり、時間もかかってしまいます。また、当初は石を適当に置いてあっただけの状態で、飛石も何度も置いては外しを繰り返していたので、穴だらけの状態でした。

まずは、石の置き場所を作っていく必要があるので、なるべく効率的に動かせるように考えて配置しますが、ポイントになるような大きな石は庭の遠くから運んでくる必要があるので、周辺の石を一旦バラして近くに置いておき、石の通り道を作ります。写真で見る以上に、今回の現場の石は大きいので、チェーンブロックで他の石や木などにぶつからないように避けながら移動します。チェーンブロックで移動する際は、高さがあると石が落ちた際に危険なので、最小限の高さに調整して引っ張って移動します。

石組の際の石の位置の決め方は、お家から庭を見たときの視点で考えて設計します。施主様が普段どこにいるのか、よく座っている場所から見た時に庭がどう見えるか等を考えて石を並べていきます。また、今回は元々置いてある石は全て使い切ってほしいとのご要望でしたので、全て使い切れるように配置しました。

一つではそこまで大きくない石も、重ねて使うことで理想の大きさの石にすることができます。今回は三段重ねにして大きな石にしました。石と石をきちんと噛み合わせてバランス良く置くため、落ちる心配もありません。他の現場の話ですが、大きな石が運べなかったので、石を割って持っていき現地で組み立てたこともあります。

今回使ったチェーンブロックは、1トンと2トンのものでそこまで大きくはなかったのですが、どうしてもどこかに引っかかりがあったり、抵抗があると2トンのチェーンブロックでもギリギリの場合があります。途中、チェーンブロックのボンデンの脚の一本が折れてしまうというアクシデントもありましたが、何とか安全に終えることができました。

余談ですが、今回の施主様は、清水園に依頼する以前に4件の造園会社に断られてしまったそうで、作業をしてくれる造園会社を探しておられました。見捨てるわけにはいかないという思いと、社員教育の一環として引き受けることを決めました。今回のように、他の造園会社が引き受けることができなかったお仕事を、最後の砦として引き受けることも度々あります。これは、長年培ってきた経験や高度な技術力があってこそですが、今後も現状に満足することなく、常に高みを目指していきたいと考えております。また、今回のような仕事は経験したくても中々できない内容の仕事なので、このような学びの機会を設けることも重要なことだと思います。