vol.112 第三回庭園のわざとオンラインセミナー
2024/11/11
皆様こんにちは。清水園でございます。
本日お伝えして参りますのは、’第三回庭園のわざとオンラインセミナー’についての内容です。セミナー講師は、野村寛治さんで、京都にある桂離宮を題材にセミナーをしてくださいました。
庭についての講習会を受けると、美しい庭園として、頻繁に桂離宮が挙げられます。桂離宮は一体何なのかを一言で表すと、遊び心だらけで、良い意味で「やり過ぎているお庭」だと思います。コンセプトが非常に強く、作者の意図が見え見えなのですが、それがわかっていても”良いな”と思わせてくれるお庭です。江戸時代初期からあるはずなのですが、新しく現代のデザインとしても通用するような、そんなところも桂離宮の凄さだと感じます。
今回のセミナーでは、「飛石」と「通路」について重点的にお話し下さいました。「飛石」とは、庭園や露地などで、歩行用にとびとびに配された石のことで、ただ歩くだけの石なのですが、石を歩きやすく置いて速く歩かせたり、歩きにくく置いてゆっくり歩かせたりと、作者の意図を感じさせます。立ち止まってここで庭を見よと言わんばかりの石の置き方、設計を行なっており、非常に奥深いものです。
桂離宮は、京都の桂川の西岸沿いに位置しますが、桂川は昔から氾濫することが多く、何度か氾濫を繰り返すうちに、川から流れてくるゴミや土を抑えるために「桂笹垣」という日本に1つしかない笹垣ができたと言われています。桂笹垣は生きている竹を編んで作っているもので、大変な手間と費用のかかる垣です。代表自身、2m程の竹垣を作った際には3、4日かかったそうですが、桂離宮の垣は約250mと膨大です。この垣があることで、川から流れてきたゴミや土が桂離宮の中に入らないようになっています。
表門は、桂離宮の正門であり、特別の場合以外は開けられることはなく,普段の出入りは向かって右手の穂垣に沿いながら少し南側に回り込んだ所にある黒御門が使用されています。
桂離宮は中も外も全て砂利や霰こぼし、飛石が敷かれており、全体では約13万個にもおよぶ小石を使用して作られています。
また、桂離宮の至る所で感じますが、全景が見えないという特徴があります。通路の先には必ず曲がり角や植栽などでさりげなく隠されているので、次に何があるのか想像を膨らませながら歩かせる設計がされています。
次に、真の延段についてですが、ひし型の飛石が斜めに振られて、尖っている部分同士で合わせられています。通常はタブーとされているのですが、それを敢えてやっている箇所が多く見られます。また、道が続いているように見えて、行き止まりであったり、それらがまた絶妙なバランスで作者の策略にはまっているような感覚になります。
次に、外腰掛けですが、外腰掛けに向けて景色が広がり、飛石が大きくなっています。ここでも、一般的な飛石の置き方とは違い、外腰掛けの中央へ導くように、飛石の上を歩かされる設計になっています。中に入ると、茶室の梁は通常は使わないような遊び心のある梁を用いています。ちなみに梁に関しては飾なので強度はかかってないそうです。また、柱も皮付きで、森の中にいるような雰囲気にするために敢えて曲がった柱を用いているそうです。
このように、建物の一つ一つ、細部にまで遊び心が溢れており、その園路を歩く度に景色が移り変わり続け、様々な風景が庭園の中で表現されています。日本庭園の最高傑作と称されるだけのことはあります。
実際、桂離宮は宮内庁の管轄なので、要事前予約制で、職員のガイド付きで見ることになりますが、興味のある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。