コラムColumn

vol.107 版築講習会

2024/9/2

皆様こんにちは。清⽔園でございます。
本⽇お伝えして参りますのは、ʼ版築講習会ʼについての内容です。


代表が⼊会している庭師会では、年に⼀度、⾊々な講習会を⾏っているそうです。
たまたま代表が幹事だったため、改装したばかりの代表のご⾃宅で版築講習会を⾏うことになりました。
「版築」とは、型枠をつくり、⼟を流し込み、それを突き固めることを繰り返し⾏うことで壁⾯を形成する⼯法であり、有名な建築物としては「法隆寺の築地塀」や「熱⽥神宮の秀吉塀」が現存します。
主な⽤途としては⽬隠しの役割があるそうで、最近では⽵垣や⼟壁が庭で多⽤されるようになっているそうですが、時間も費⽤もかかる上に、造れる職⼈が少ないそうです。
版築⾃体は塗り版築と⾔って、左官屋さんが版築壁⾵に塗る⽅法もあり、またコンクリートの壁にお化粧的な感じで版築をしているものもあるそうです。室内⽤であれば問題ないのですが、外では強度がないため割れてしまうこともあるそうです。
版築の⽋点は⾬に弱いことで、下に腰壁等の構造物がなければ⽔を吸ってボロボロになってしまいます。今回の講習会では、まず⽯積みで⼟台形成をしてからその上に版築を作っています。」


今回の講習会は⽯積みの講習会ではなく、版築のみの講習会であったため、講習会の前に代表がお⼀⼈で⼀週間かけて⽯積みを完成させたようで、とても⼿の込んだ準備をされていました。
「今回の⽯積みは野⾯積み(⾃然⽯に加⼯を施さずそのまま積み上げる⽯積みの⼿法)のため、⽔⽷を張る丁張りの鉄筋を⼸なりに⽴て、⾓の⽯は全てハンマーで叩いて直⾓に割り、天板から逆算して⽯積みを形成していきます。⽯には個体差があるため、まっすぐに積むのは中々⼤変な作業です。
また、⽯をハンマーで叩き割ることも慣れが必要で、200〜300kgあるような⼤きな⽯であれば動かないため割りやすいですが、⼩さな⽯だと叩くと動いてしまうため⼒が分散して割りにくく、繊細さが求められます。そこで、砂袋を置いて固定して叩いたり、⾜で固定して叩いたりしますが、割れなかったり、⼒の加減で真⼆つに割れてしまい、もう少しのところで⽯が使えなくなったりします。」

⽯積みが完成したら、次に型枠を作ります。
「作った型枠にただコンクリートを流し⼊れるのではなく、⼊れた後に突き固めていくため、型枠が弱いとはらんでふくれてしまいます。そのため、通常の型枠よりも丈夫に作らなければ型枠が途中で曲がってきたり、浮いてきたり、壊れてしまったりと壁⾃体が作れなくなってしまうので、型枠は⾮常に重要です。型枠の周りのパイプは、後で型枠の上から⼟を⼊れて突き固める際の踏み台として⽤います。」

そして型枠まで完成したところで、版築講習会当⽇を迎えました。
「まずは型枠に⼊れる⼟を練っていきます。⾊々な層にするために、⾚い⼟や⽩い⼟、炭を混ぜたり砂利を⼊れたりと5、6種類の⾊々な⼟を混ぜていき、⾊合いや質感を調整していきます。⾊粉という⾊をつける粉もありますが、わざとらしい⾊になるため今回は⽤いませんでした。」
「版築に⽤いる⼟は、にがりと⽯灰と⼟を混ぜたものを⽤いますが、それだけではどうしても脆くなってしまうので、セメントを少し混ぜて作ります。セメントは通常、セメント:⽔=1:3の割合で作りますが、セメントを多く使うと⽩くなってしまうので、版築の場合には強度を下げて1:5の割合で⽤いています。」

また、⽔加減がとても⼤事でギリギリの⽔の量で練って使います。
「模様を作る際には、中の様⼦が⾒えないコンクリートパネルの型枠に、こういう模様になれば良いなと想像しながら⼟を混ぜて突き固めていきます。実際にどのような模様に仕上がるかは型枠をバラしてみてからのお楽しみです。型枠を外した直後は、⾊が茶⾊く⽔を含んでいますが、乾燥させると、⾊も⽩くなっていきます。」
「⼟を突き固める際には、棒と⾓材を⽤いて、とにかくドスドスと⼿がパンパンになるくらいまで突き続けます。本来であれば3、4⽇は型枠を外さないのですが、講習会なので中⾝を確認するために型枠を剥がしました。写真を⾒ると断⾯が何層にもなって模様ができているのが分かると思います。コンクリートの壁とは違い、綺麗にしすぎてもダメで、均⼀感がないように仕上げています。」
「型枠を剥がした直後は、型枠に沿って平らな壁になっていますが、最後の仕上げとしてビシャンでトントン叩き(料理をする際にお⾁を⾁たたきハンマーでトントン叩くのと同じような感じ)、平だった表⾯を凸凹にして模様を付けたら版築の完成です。」

「版築は、新しい技術ではなく古い技術ですが、強度をつけるためにセメントを材料として⽤いたりと、現代⾵の版築とも⾔えますね。」
ちなみに、当初は物⼲しの⽬隠しとして版築を作ったようで、こんなに豪華な⽬隠しが必要なのかと⾔われたこともあったそうですが、この版築のお陰で、後⽇、清⽔園倉庫で⽕災が発⽣した際に代表宅への被害が最⼩限に抑えられたそうで、⽕除けの役割まで果たせることに驚きました。代表宅を守ってくれた版築には本当に感謝です。



完了:版築壁終了
着工前:石積み丁張・位置出し
石積み
石積み
石積み
版築壁突き込み
版築壁突き込み
版築壁練り
型枠撤去状況
壁ビシャン仕上げ

関連ページ【弊社作業場兼倉庫で発⽣した⽕災について】