vol.108 第38回⼭⼝全国⼤会
2024/9/16
皆様こんにちは。清⽔園でございます。
本⽇お伝えして参りますのは、ʼ第38回⼭⼝全国⼤会ʼについての内容です。
「⼭⼝県へ⾏きたいと思ったきっかけは、⼭⼝県で活動されている有名な造園家の坂本利男さんにお会いできることでした。彼のすごいところは、「擬⽯」の技術に優れているところです。「擬⽯」とは、その名のとおり、本物の⽯ではなくコンクリートを使って⽯を作ることです。例えば、重量物が置けないところに⽯を置きたいが置けない場合に、⽯を作ることができます。この擬⽯の技術があれば、庭の幅がとても広がります。」
一⽇⽬は、基調講演を拝聴されたそうです。
「基調講演では、⼭⼝県知事や⼭⼝ゆめ花博プロデューサーの澤⽥裕⼆さんのお話がありました。公園の課題や問題点など、⾊々なことをお話しされていましたがその中で印象に残ったのが、「公園は使って初めて意味のあるもので、ただ存在するだけでは意味がない」というお話です。最近では、せっかく公園があっても使えない状況になっているそうです。例えば、⼦供の声など騒⾳の苦情、遊具の撤去、利⽤規制・禁⽌事項の多さ、管理費不⾜など様々な要因があります。苦情が2、3件あったという理由で公園を潰してしまった事例もありました。このように、せっかく⼦供たちが楽しみにしているのに、⼼無い苦情や⾏政の都合で公園が使えずにいることが今後の課題であるというお話をされていました。
今回の⼭⼝ゆめ花博では、「使う庭」を重視し、⽇本⼀⻑い⽵のコースターや⽇本⼀⻑い⽊のブランコ、⽇本⼀⾼い⽊のブランコ等様々な遊具と遊び環境を開発し、⼦供たちに遊んでもらうことをコンセプトに公園を作ったそうです。公園をいかに使っていくのか、どのように使ってもらえるのか声掛けをしたところ、市⺠団体に使ってもらえることになったそうです。これをイベント時だけでなく、その後も公園を残して使ってもらえるように様々な取り組みをされているようです。」
「以前、宮城県で⾏われた緑化フェアに関しては、イベント会場としての公園を作りましたが、現在はイベント会場だけが残り、公園⾃体は駐⾞場になってしまいました。」また、東京オリンピック・パラリンピックの開催にあわせ、東京を訪れる国内外の⼈々を花と緑で“おもてなし”をし、都⺠との交流の場となることを⽬的とし、代表を含む団体が芝公園内に作った「おもてなしの庭」は、7年間は残してもらえるようです。
「やはり、作ってすぐに壊してしまう庭と、イベント後も残してもらえる庭というのは、県⺠性や財政⼒等様々な要因によって変わってきます。もう少し永続的に使うことはできないのか、庭を作る私たちとしては考えさせられます。」
このような問題は、公園に限らずお祭り⾏事や花⽕⼤会、学校⾏事等様々な場⾯で、全国的に存在していると思います。苦情があるから取りやめる、管理費がないから無くしてしまう、ということは簡単ですが、⼭⼝ゆめ花博のように、いかに⼯夫をして、改善をして、価値ある施設や⽂化を未来に残していけるかを考え続けることが重要なのだと思います。
「続いて、⼦供の頃に何をやってきたかによって、⼤⼈になってからその経験が⽣きてくる場合があるというお話もされていました。特に、屋外での様々な体験が⾮常に重要だということでした。私⾃⾝、仕事で保育園、幼稚園の先⽣とお話する機会がありますが、⽕と刃物を⼦供たちに触らせることが難しい時代になっており、あまり切れない刃物で鉛筆を削ったりさせることはあっても、先が尖っている刃物は使わせられないそうです。また、家にある調理器具がI Hになってきており、ライターや蝋燭を使う機会も少なくなっていることから、⽕を⾒たことのない⼦供が増えているそうです。造園の仕事に関して⾔うと、⽊登りをしたことのない新⼊社員もいるため、そこから教える必要があり中々⼤変です。このように、⼦供の頃の体験が⾮常に重要なのですが、その体験ができなくなってきているのが現状です。」
⼆⽇⽬は、坂本さんが作ったお庭の⾒学に⾏ったそうで、坂本さんが作ったお庭を⾒た第⼀印象は、代表が尊敬し、当コラムにも何度も登場している御⼿洗先⽣のお庭に⾮常に似ているということでした。
「なぜかと⾔うと、⼭⼝県と御⼿洗先⽣の⼤分県が近いということと、坂本さんが御⼿洗先⽣のことをとても尊敬しており⼤ファンだったと⾔うことで親交が深かったそうです。実際に坂本さんのお庭を⾒てみると、御⼿洗先⽣がまだ⽣きているなと感じさせられるような印象を受け、嬉しくなったのを覚えています。」
「いろり⼭賊錦店の⾨があるのですが、これは⽇本で⼀番⼤きな⽊造のトイレです。お城の⼊⼝を模している、すごく⽴派なトイレです。その⾨の真ん中にある⽯は、⼾擦り⽯と⾔いますが、これは擬⽯です。坂本さんのすごいところは、このように⽯を持って⾏けない場所に⽯に⾒⽴てたコンクリートを作る技術を持っていることです。通常、⽯を置く場合には、建物を建てる前に⽯を運んでおく必要があるのですが、今回のケースは建物が建った後にここに⽯を置きたいとなったそうです。このクラスの⽯はおそらく7tくらいになってくるので、運び⼊れるよりも作った⽅が早いと⾔う経緯で、擬⽯が作られたそうです。」
「その他、コンクリートの川底も「洗い出し」と⾔う擬⽯で作ったり、古い桶も味噌樽を再利⽤し、明かり取りをつけていたりと、御⼿洗先⽣が作ったような印象を受けます。」
「また、⽔落ちは通常、砂利をひいて⽔が跳ねないようにするそうですが、たまたま、建物を建てている間に置いてあったものに⽔があたり跳ねている様⼦が⾯⽩く、あえて⽔が跳ねるように⽯を置いたそうです。通常は絶対にやらない⼿法ですが、それをあえてやってしまうところが、想定外で驚かされました。」
「その後、⽇本三名橋の錦帯橋を⾒ましたが、氾濫の多い川で、この橋は今までに3度流れてしまったそうです。毎回流れてしまうので、コンクリートにしたら良いのではないかと⾔う話もあったそうです。欄⼲だけは⽯積みになりましたが、基本は⽊造にこだわったそうです。世界的にも稀な構造で、流れてしまっても再び組み直せる橋のようです。」
最後は、世界遺産であり、平清盛も信仰していたと⾔われる厳島神社へ⾏かれたそうです。代表は、⽇頃から⾊々な場所へ⾏って神社仏閣を⾒て、材⽊の素晴らしさを感じたり、歴史を学ばれているそうで、庭師仲間の⽅達と⾊々なお庭を作った苦労話などをしながらお酒を飲んで熱くなることもあるそうです。ものづくりは、作るだけではなく、⾊々なものを⾒て、感じて、学ぶことも重要なのだと改めて感じさせられます。