vol.94 青葉区R邸造園工事
2024/3/4
皆様こんにちは。清水園でございます。
さて、本日お送りするお話は「青葉区R邸造園工事」…少々訳ありの現場だったご様子。
「こちらの先様はいわゆる‘注文住宅’で、平屋を建てる際にセットでお庭も注文したけれど…という内容だったそうなのです。ですが…庭の石積みの途中、施主様がその石積みがお気に召さなかったようで…‘他に手がけてくれる造園屋はいないか’との事で、弊社が途中で引き継ぐ事になった現場なのです。」
実は、こういった形で作庭を引き継ぐことは多いのだそう。と申しますのも…ハウスメーカーや大工さんが主だって手がけるのはやはり「住宅・建物そのもの」。お家が無事に完成すれば問題はなく、その分庭に対する比重も低いとの事。
「ハウスメーカーの営業さんも、建物については十分な知識をお持ちですが…なかなか植物に関して応えられる方というのはほとんどいらっしゃいません。また、注文住宅の場合お客様と造園屋が直接話すことはまずありません。ですから、施工する側にイメージが伝わらず今回のケースのように石積みがイメージと違う・お気に召さない…という状況は十分に発生し得るのです。特に石積みに関しては、サンプルを見たとしても同じ人が積まないと似た仕上がりにはなりません。
メーカー側からすれば契約書通り仕事はしているものの…断られてしまえばどうしようもございません。こういった一括ローンでの注文住宅というケースにおいて「お客様の作りたい‘庭’」を作ることはなかなか叶いませんし、とはいえ新しく庭だけ作るのに改めて費用を捻出できる方も多くはいらっしゃいませんから…お客様にとっても業者にとってもジレンマが付きまとうのというが現状ではあるのです。」
そんな中お話が巡ってきたR邸、代表はひとまず先にあった石積みを最小限度で解体し積み直しを行われたそう。小さな最上石で細かく積まれた石積みを丸森石で繋いで参りましたが「肝心の角石まで解体すると全部解体するしかなかった…」との事で、こちらは泣く泣く既存のものをそのまま使用されたそう。
「石も人と同様、ご縁のものですから致し方ございません…ですが、こちらの現場では敷地内に置く景石で良いご縁がございました。クレーンで運ぶことのできるギリギリの重量の鳴子(ナルコ)石。幅2m・奥行1m・高さ1m程の巨石ですが、これを「あえて一つだけ置きましょう」と提案させて頂いたところ、施主様にも気に入っていただくことが出来ました。「庭の半分が石」という、石の存在感が際立つ画期的な庭に仕上がったのです。」
鳴子石は宮城県で採れる石なのだそうですが、軽石である為同じサイズの川石に比べると随分と軽く、また苔がのりやすく雰囲気も演出しやすいとの事。完了直後のお庭を拝見すると…確かに唯一無二の存在感を持っていることが見受けられます。
「現場を手がけた8年後に、冬囲いの下地で使う‘らせん巻き’を元にしたバラの支柱も加わり、植栽も育ってきて庭全体の統一感が出て参りました。とはいえ、やはり植物が育つ一方で石は育ちませんから…思い切って大きな石を持ってきたのは正解でした。こちらへは定期的に手入れに伺いますが、その度に施主様と‘(やはりこの石は)良いよね’とお互いに頷く程です。」
この住宅街の中で景石があるのはこのお家だけだそうで、バラ園のように管理されとても綺麗な状態を保たれているとのこと。紆余曲折を経たものの「お客様の作りたい‘庭’」が実現する事は、やはりかけがえのない事のように感じられます。