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vol.51 宮城野区K宅滝石組

2022/8/23

皆様こんにちは。清水園でございます。

写真のデータを整理していると、数年前筆者の訪れた大きな滝の写真が見受けられました。伺った当時は雨が降っていたこともあり、地元の方々も「こんなに水流の強い滝は初めて見ました」と驚いておられる様子だったことを今でもよく覚えております。

その力強さと生命力は、何時とも我々の記憶に強く残り、また活力と癒しを与えてくれる存在のように感じます。

さて、本日お伝えいたしますのはそんな「滝」のお話し…なのですが、清水園がご紹介いたしますのは「滝石組み」でございます。

「平成25年1月に手がけた現場のお話です。施主は私の家の前に住むお家の方で、元々花卉(かき)農家を営んでおられます。

ご自宅の建て替えに伴いお庭を造成したのですが、打ち合わせの際‘土が流れるから土留をした方が良いよね’、‘ついでに滝も作ったらかっこいいよね’…という具合に、その場で滝を作ることの決まったユニークな現場です。

予算や工期の兼ね合いは勿論ですが、私自身それまでに10ヶ所ほど滝の制作を手がけており、滝自体とても好んでいましたから…遊び心も加味しつつ、施工に至った次第でございます。」

‘滝を作る’…素人質問ながらまるで神業のような響きですが、大変な作業ではないのでしょうか。

「勿論、簡単なようでいて難しい作業であることには相違ありません。まず、現場に法面か高低差がないといけません。この現場での法面は削るのではなく土を盛って作っておりますが、高いところから低いところへ水を流しますから…最低でも1mはないと滝を作ることは難しいです。

また、‘水漏れ’が最も厄介で沼にはまってしまう部分の一つです…どこから漏れているのかなかなか分からない分、修正には困難を来します。

例えば、お金をかけて全てコンクリートで固めてしまえば水漏れすることはほとんどないのですが…全てがコンクリートだと大変制約が多いのです。地形の変更も出来なければ。予算も高くなってしまいます。

また、東北は震災が多いですから…固めてもひび割れで水漏れするリスクはゼロではございません。一方で防水シートなどは、可塑性があり扱いやすいのですが…施工によっては穴が空いてしまうなどして、やはりこれもまた緊張感を強いられます。」

なるほど…確かに防水という観点では池工事同様に、水を扱う事に対する緊張感が隣り合わせな現場なのですね。

「そうなのです、また、その水の流れもある程度想定して石組みを行うのですが…ポンプの強さや高低差、石の窪みによっては水が上手く流れないこともございます。

場合によっては溢れて予定外の水の流れができてしまいますから、溢れないようにも調整が必要です。

また、余計な箇所から水が流れてしまうと美しくありません…こういった状況下、コンクリートで固めてしまうと再び石をばらさなければなりませんから、非常に悲しい事になってしまいます。

実際こちらの現場でも、石組み自体は1週間程度で完了したのですが…その後1ヶ月程度水を流しながら調整を繰り返し行いました。」

滝を作るために防水の配慮から水の流れの調整まで、技術を求められる部分が多分にあるようです。

「そうですね、配慮の必要な部分は多々ございますが…大変なものの滝を作ることや水の流れというのは庭師のロマンのようにも感じております。

石積みにしてもそうですが、こういった現場はどうしても親方が直々に手がけたり致しますから…社員が滝作りに携われないということはままございます。

また、そもそも滝を作る為には敷地面積や予算がかなり必要ですから…作ることのできる現場自体も、数が限られておりますしね。

また、少なくとも滝は庭に必ず必要…というわけではございません。‘なくてもいい、けれどもあったら贅沢で素敵だよね’といったようなもの。これら贅沢品をいかにわざとらしくなく作り仕上げるか、またこの配慮をいかに感じてもらえるか…作り手としては一種の駆け引きですね。」

‘なくてもいい、だからこそ自然に’…確かに、そういった意味では水の流れ一つとっても自然な状態を志したくなるように感じます。

「水は静かに流れて透明なだけでもいけませんし、白く泡立っているだけでもいけません…これらのメリハリをつけて流すのには、やはり技術力や観察力を求められますね。」

また、そのようにして滝を完成させた後…やはり管理の上でも留意点がいくつかあるとの事。

「ご家庭に作った滝の多くは、池などに貯めた水をポンプで吸い上げて滝を流し循環させる…という仕組みになっております。

ですので、水の流れるルートはなるべく綺麗に保つ必要がございます。

落葉などがあると、どうしても水が汚れてしまいますから…その辺りは定期的なお手入れが必要ですね。ちなみにこちらのお宅は全て井戸水を使用しているので入れ替えに心配はありません。」

そう、花卉(かき)農家というこちらの施主様、ご職業柄植栽は自身で楽しんでおられるとの事。

「滝もあり、華やかな花壇もあるなど…和洋折衷なお庭に仕上がっているように感じます。余談ですが、実はこの滝を作る際に使用した石たち…震災後だったということもあり、地震で庭ごと解体した廃材だったものなのです。

石は全て鳥海石、山石で比較的柔らかいですが硬すぎず扱いやすい石ですね。表面には凹凸もあって苔が乗りやすいですから…現在は苔むして周囲の風景とよく馴染んでいますね。」

確かに、石によっても表情は様々…代表曰く、他のご家庭で鮫川石などを使われる場面もあるとの事ですが、鳥海石の落ち着いた表情はとても魅力的ですね。

「滝石組みは通常の石積みと違い、ただ上から水を流すだけにはなりますが…やはりより自然に感じていただく為に、奥の方が渓谷、上部に尖った鋭い石、下の方に丸い石を置く…といったように工夫しております。

また、元々そこに水が流れていた所に庭を作ったのだろうかと思われる配置をし、最後に水を流した際にきちんと水が‘遊んでいるかどうか’…美しく水が流れた時の感動はひとしおです。」

滝のあるお庭…作る側も在る側もまた、深い豊かさを感じられるお庭のように感じます。



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