vol.50 ハサミ修理・寄付
2022/8/9
皆様こんにちは。清水園でございます。
さて、2022年3月21日に発生致しました弊社の火災事故についてですが、結論から申し上げますと現在は新しい倉庫の建設に向け順調に進んでいる次第でございます。皆様からの温かな励ましのお言葉・ご厚意にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。
本日お話し致しますのは、件の火災にて燃えてしまった代表の「ハサミ」について。修理やご寄付頂いた経緯がございますので、お伝えして参りたい所存です。
「ハサミに関して申し上げると、刈込が全部で10本燃えてしまいました。その刈込の中には初代から受け継いだとても大切なハサミもございましたので、形だけでも元に戻せないか…ということで修理を依頼した次第です。」
そう、刈込には昭和39年以前に作られた初代も愛用する水間のものが2本、そして代表が使用していた平成16年製の村上のもの1本が含まれていました。鍛冶屋さんも店じまいし、今では購入する事が叶わない品物です。
「刃物は火が入ってしまうと焼きが入った状態になり、そのままですと非常に欠けやすいのです。その為修理は専門の鍛冶屋さんにお願いし、焼戻し等の工程も経て柄も新しい状態に直していただきました。
当時燃えてしまったものは仕方ないとある程度開き直ってはおりましたが…やはりこれらのハサミはお金では変えないもの、会社の伝統と歴史に関わるものです。修理後は新品同様の見た目ですが、やはり耐久面で考えると以前よりは弱ってしまっております…ですから、これらは新しい倉庫ができた際に額装して飾る予定にしております。」
これらのハサミが修理から帰ってきたのは、6月13日だったとの事。代表はその間規制品のハサミを初めて使われたとの事ですが、どうにも相性が悪かったようで刃もすぐに欠けてしまい研ぎ磨き仕上げるのも一苦労だったそう。
「そんな中、6月16日に庭師会の総会があったのですが…その際に国見造園の齋藤社長が‘火事見舞いを出来ていなかったから’と、次の日に平成4年製の村上の刈込ハサミと手ハサミ…いずれも新品で未使用のものをくださったのです。
齋藤社長曰く‘後継がいないので使ってくれる人がいた方が良い’との事でしたが、有難いことこの上ないものです。
お金で買うことのできる道具は勿論自身で購入しますが…規制品のハサミを使ってみて、村上のハサミの良さを実感致しました。道具がないと仕事は出来ませんから、とても嬉しいお見舞いでした。」
代表が造園を始めた時分、鍛冶屋さんがいらっしゃた頃には「初めから良いものを使わないとダメ。良くないものを使うとそういう腕になってしまうから。」と、目上の方からハサミを頂くことがあったとの事。
「ハサミは造園業に関する重要な道具ですが、やはり鍛冶屋さんがいなくなると道具にこだわる方も少なくなったように感じます。技術・歴史をつなぐものとしては、残しておかなければいけないものは元の形として残しておきたい…私のこだわりと美意識でございます。」