コラムColumn

vol.130 うろこ積み【前編】

2025/9/30

ー技術と感性が織りなす石積みー

皆様こんにちは。清水園でございます。
今回のコラムでは、珍しい施工となった「うろこ積み」についてご報告させていただきます。

通常、私たちがうろこ積みを行う機会は多くはありませんが、今回は偶然にも、2箇所の現場でご依頼をいただくということになりました。そのうちの一つは、あるマンションの1階正面に広がる、約120平米の法面(のりめん)のうろこ積みでした。

うろこ積みとは、その名の通り、龍の鱗のように凹凸を持たせて石を積み上げていく方法です。一般的な石積みでは、石の面を揃えてフラットに仕上げるのが基本ですが、うろこ積みではあえて面を揃えず、波のような自然なリズムを生み出すことで、独特の風合いと存在感を表現します。一見、ランダムに積まれているようにも見えますが、実は非常に繊細なバランスと技術が求められます。

代表の話によれば、実はこのうろこ積み、通常の石積みよりもバランスがはるかに難しいとのこと。丁寧に積みすぎると整いすぎてしまい、鱗らしさが失われてしまう。一方で、適当に積んでしまえば石の安定が崩れ、構造的に危険が生じる可能性もある。絶妙な「揃わなさ」の中に秩序を見出す作業は、経験と感覚の両方が問われる、まさに職人の腕の見せどころです。

施工前と完成後の法面の傾斜を比べていただくと、完成後の方がやや緩やかになっていることがわかります。これは、土砂崩れ防止の効果を高めるとともに、石にかかる荷重が垂直方向になるように考えて積み上げた結果です。法面が垂直に近いままだと、荷重が斜めにかかってしまい不安定になるため、あえて後方へと傾けることで、荷重をより全体に分散させて安全に石へ伝える構造としました。



着工前
完了
完了
完了
着工前