vol.133 剪定作り替え2【後編】
2025/12/8

[後編] 正しい剪定と庭の景観
正しい剪定の基本は「根元から枝を落とし、短い枝に更新していく」ことです。そして新たに出てきた枝を残し、長くなった枝を切る。この繰り返しだけである程度仕立てていきます。シンプルな作業ですが、スピードはとても早く、仕上がりも自然で美しくなります。たとえばモミの木などの三角形の高木なら、5年に1回程度の剪定で済むので、施主様にとっては手入れの回数が減り、大きなメリットとなります。ただし、葉が多い木は成長も早いため、毎年の剪定が必要です。
植木屋の剪定は、知識があれば表面だけでなく内側の剪定まで行えますが、刈り込みしか知らない職人は刈り込みしかできません。本来は枝抜きから始め、太い枝を落とし、最後に細かい枝を刈り込み鋏でさらっと揃えるのが基本です。しかし、多くの職人が最初から刈り込み鋏で太い枝まで切ってしまいます。明治時代の文献にも枝抜きをしてから剪定していたことが分かる記載がありますが、その工程がだんだんと省略されるようになり、間違った方法が広まったのだと考えられます。
実際に他の植木屋さんへ指導する機会もありますが、「枝抜き」という技術自体を知らない方も少なくありません。正しい技術を持つ人がきちんと時間をかけて指導すれば広がりますが、誤った方法で剪定を繰り返し行うと悪循環が続いてしまうのです。
また、別の施主様邸では「松の元気がない」とご相談を受けましたが、一目で日当たり不足だと分かりました。問題は、飛石や景石があるにもかかわらず、木が大きくなり松の木を覆い隠してしまい、庭本来の姿が見えなくなっていたことです。古い庭ほど、さつきなど刈り込み幅が大きくなり、景石や飛石などが隠れてしまうのが最大の課題です。
よく申し上げるのですが、「石には水や肥料を与えても大きくなりません。しかし木は大きくなります。つまり庭の広さは変わらないのに、木だけが成長すると庭が狭くなってしまうのです。」
庭の骨格を取り戻すことは、石の形や配置を最も美しく見せることにつながります。庭は通路としての機能もあるため、道幅が狭くなってしまった場所を広げる意図も含まれています。景石もまた景観を楽しむために置かれたものですから、木に埋もれてしまっては意味がありません。管理の仕事とは、庭の「機能」「関係性」「バランス」を整えることです。木を剪定するだけではなく、庭そのものを良い状態で生かし保つこと。それこそが私たちが考える「庭の管理」だと考えています。
