コラムColumn

vol.57 幼稚園駐車場造成石積み

2022/10/25

皆様こんにちは。清水園でございます。

当コラムを通じて様々な現場の様子を皆様へお伝えする為、代表に現場の写真を見せていただきながらお話を伺うのですが、本日お送りする現場は数ある現場の中でも「着工前・着工後がまるで違う」と目を見張る現場でございます。

打ち合わせ前に事前資料に目を通す中で筆者自身も見返した程でした。着工前後で地形から建物の印象までまるで違う…代表に「違う現場のお写真でしょうか」と連絡しようかと頭をよぎったものの、作業中のお写真を拝見する中で「同じ現場がこんなにも変わるものなのか…」と驚嘆と共に造園の凄みを思った次第です。

件の現場は、仙台市青葉区にある「福聚幼稚園」の駐車場。今から約10年前に代表が手掛けたとのことです。

「伝統ある自然豊かな幼稚園なのですが、当時は慢性的に駐車場が全く足りない状態でした。山の裾野に幼稚園、山頂に駐車場があったイメージです。山頂の面積というとどうしても狭いものですから、山を削って広くし駐車場の面積を確保する…といった内容です。」

着工前後の印象がまるで違ったという起因はここにあり、着工前は駐車場から幼稚園を見下ろすような状態で、園の2階部分がようやく見えるような地形でございました。

一方で、山を削り高さを下げ広げた事で、幼稚園に階段を降りて行かなくても良くなった…建物自体はペンキを塗っただけではあるものの、結果着工前後で全く違う現場・建物のような印象を抱かせた、という事なのでございます。

また、「造成石積みの現場」と聞いていたものの、完了したお写真を見ると石積みの場所がどこにあるのか、一見分からない状態になっていることにも気付きます。

「石積みは2箇所行っていて、最初の完了後の写真ですと分かりづらいかもしれませんね…と申しますのも、山を削って地盤を下げた際建物の間に元々別の石積みがあり、解体して土留の為にもう一度石積みを行ったのですが、駐車場側からは全く見えず建物側からしか見えない場所に当たります。」

確かに、お写真を確認すると建物を縁取るように石の天端が確認出来ます。また、他のお写真も拝見していくと、確かに建物と石積みの間に多少の間があり、建物ギリギリまで面積が拡張・駐車場が増設されていることが分かります。

「こちらは私有地なので問題はないのですが、本来は建物の近くで2m以上の石積みを積むことはあまり良しとされておりませんので、今回の現場はかなり貴重なケースです。土留の為の石積みですから、駐車場の面積を広げる為には致し方ありません。」

また、普段現場で水糸を使用しない代表も珍しく白いテープを使用して石積みのラインを確認する程、緊張感がある現場だということも伝わってまいります。

「スタートの石がとても大きな石で、大きさは約1m50cm、重さは3トン程でしたから持ってくることも一苦労でした。石を運搬する人と積む人に別れて、効率よく作業を進めて参ります。」

現場の着工前後で大きく印象の異なる現場、その所以は駐車場を拡張する為に地面を削り広げ地形が大きく変化したことにございました。

「造成石積みでも印象が変わることはもちろんですが、当初法面にあった植栽の数々を大幅に移植したことや地盤がかなり低くなったことも、印象を大きく変えた要因の一つかもしれません。」

確かに、元々かなりの勾配の法面には高木・低木様々な木々が植えられていた模様。これらを移植するのにもかなりの労力がかかりそうです…

「現場には、サザンカ・サクラ・ツツジ・サツキといった植物が多かったですね。非常にタイミングの良いことに、同時進行で進んでいたパークゴルフ場を造成中でした為、それらの植物の多くはパークゴルフ場に移植することになりました。

植栽の場合は高木→中木→低木と背の高い順で植えていくのですが、移植の為に掘り取る際は低木→中木→高木と、背の低い順で掘り取って参ります。

ですが、今回は‘掘り取りすぐに移植する’という現場でしたので、先に植える高木から順にパークゴルフ場へ移動し移植を行いました。

その他、敷地内に移植を行うものもありましたので、うまく段取りを組みながら掘り取りと移植を繰り返しました。どこかに仮植えを行う必要はありませんでしたが、全ての移植を終えるのにはひと月程かかったように思います。」

少しの移動でも植物にとってはストレスになってしまう為、手順やそれに伴う重機の手配など速やかに進行する必要があるようです。

また、こちらの現場では様々な種類の重機が使用されており、石積み用の25トンクレーンなどはタイヤが地面にめり込まないように‘地面に敷く為の鉄板’を先に搬入し現場に入ったそう。

「法面側の石積みは元々あった石積みを解体して再利用しています。鳥海石と国見石を混ぜて使用していますね。

土留が目的ですと、お金をかけて同じ石を全て揃えるよりも同じ石を再利用して足りない分を補う方が経済的に仕上げることが出来ます。

通常異なる種類や色の石を使用すると統一感が取りづらいので敬遠されがちですが、違和感の無いように積むことが腕の見せ所ですし重要なポイントかと思います。」

法面を仕上げた後は、先ほどの鉄板を回収して作業は完了です。

「こういった現場の話でよく出てくるのですが、‘コンクリートが早いか・石積みが早いか、どちらが安いか’というような内容、これは技術・考え方の問題に尽きるように感じます。

完璧な水平垂直を取るのにはコンクリートが適していますが、工期も予算もかかる割には殺風景になります。

一方で、私の場合ですが予算とスピードで言えば石積みは非常に早く仕上げることが出来ますし、昨今の背景を考えると環境にもやさしいと思います。

また、どのような場所で石積みを仕上げるのかで使用する石や積み方の塩梅をコントロールしております。再び現場を訪れて改めて自身の仕事を目の当たりにした時に‘自分でこの景色を作った’と言えるのは、我々の仕事の誇らしい点の一つのように感じます。」



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