コラムColumn

vol.44 アプローチ石積み・階段工事

2022/6/7

皆様こんにちは。清水園でございます。

本日お伝えして参りますのは、「アプローチ石積み・階段工事」についてでございます。こちらは、代表が過去に手がけた石積みを一度解体し、再度積み直したというもの…その際に様々な気づきがあったご様子。

「地形変更する場合の石積み直しというのは、時々ございます。今回の現場では、駐車場の台数を増やすために、2ヶ所あった入り口のうち1ヶ所を閉じ、地盤を上げ平らにする…といった内容の工事でした。」

代表が初めてこの現場で石積みを手掛けたのは20代前半…代表がまだ石積みを始めた当初だったとの事。

「当時は、大きな石を置けばかっこいい…と思っていました。確かに石そのものの迫力や荒々しさ…みたいなものは伝わってくるのですが、振り返ると洗練されておらず、雑な感じが否めませんでした…。

積み直しを手掛けたのは初回から約10年後でしたから、私自身の石積みの経験値が上がっていた事もあり、やはり全く異なる積み方になりましたね。」

「清水園といえば石積み」といっても過言ではない程、代表はこれまでに多くの石積みを手掛けて参りました。1年間に3〜4ヶ月、平成16年は一番多く1〜8月まではほとんど石積みの現場だったとの事。

「延べ1km以上は積んできたのではないでしょうか…それだけの現場を手掛けさせて頂いたことをはじめ、貴重な経験の数々に感謝しきりでございます。」

数多くの現場を手掛けてきた代表、初回と10年後の積み直し後の石積みの現場では、どのような点が異なっていたのでしょうか。

「根本的に違った点と致しましては、‘あまり石を選ばなくなった’という事でしょうか。全く気にしていないと申し上げると嘘になってしまいますが、‘その石が入るであろう’という事が直感的に分かるようになっていました。掴んだ石がそこに収まるようになってきたのです。」

無意識のうちの意識…無意識のうちにやっていることは、今までの人生や経験をもとに動いているということ。代表が「掴んだ石がそこに収まる」というのは、それまでの経験上から「収まる石を選んでいる」ということなのでしょう。

「その他異なった点と申しますか、意識の点では‘一つ一つの隙間は誰も見ないよ’と思えるようになった…ということでしょうか。

石と石…一つ一つの隣との関係を気にし過ぎると、積むのに大変時間がかかりますし、どこかで帳尻を合わせるために石をたくさん加工する必要が出てきます。

それよりも、全体の景色・調和を考えると効率よく速く積むことが出来るのです。角など決めるところはしっかりと決めて、あとは肩に力を入れすぎず積んでいく…という具合でしょうか。

昔は、石同士をピッタリとくっつける為にたくさん叩いて加工していました。また、‘叩いたから使うしかない…’という場面は今でも稀にございます。

ですが、経験を積めば積むほどに、技術に加えて‘俯瞰して見る事ができる’という視座も培われたように感じます。」

「石積みに慣れてきた頃から…現場にはよりますが大体3〜5段で積むようにしております。積み直しの際も3段で積んでありますね。3段積みですと、石が全て斜めに連なって見えるのでとても綺麗で、石積み自体のバランスも安定感があるのです。」

初回に手掛けた石積みは2段で積まれていたようです。2段とそれ以上とではやはり積みやすさなどが異なるのでしょうか。

「2段積みは、一番簡単で積みやすい方法です。‘簡単だから2段積みを選ぶ’というよりも、‘3段積みの難易度が高い’とお伝えする方が正確かもしれません。

3段積みの場合、石を3つ重ねていかなければなりません。ここで隣の石や下の石で調和が取れなくなると…‘階段積み’といって、どんどん後ろに下がる積み方になってしまいます。ですので、慣れていない方は2段積みになりがち…というわけなのです。」

現場の広さなど、物理的に3段が難しい場合は2〜1段の石積みも行われるそうですが、高さに制約がなければ3〜5段が理想的との事。

「加えて、2段積みの際当時の私はなるべく大きな石と小さな石を使用していましたが、小さな石というのは意外と厄介で…と申しますのも、石は‘何があっても取れないようにしないといけません’。

小さな石になればなるほど、外れやすいので叩き入れたり後ろから突っ込むなどして確実に動かないようにする必要がございます。」

なるほど、確かに石が外れてしまっては大事故に繋がりかねません…改めて現場を振り返ると当時の技術力に気付かされることも多くあるのですね。

「そんな過去の自分を振り返る事ができる点もまた、石積みの良いところなのかもしれません…セメントを使っていませんから、解体してより良い状態に積み直すことも出来ますしね。

積み直しの際、黒っぽい石と赤みのある石とそれぞれございますが、黒くなっている部分は、石の中の鉄分が酸化…錆びて黒くなっています。

ですので、なるべく黒いところは黒いところが見えるように使用しています。時間をかけて全体的に馴染んでいくのもまた、石積みの風情ですね。

石自体の古い新しいといった組み合わせはあまり意識はしておりませんが、石との出会いに限らず、石積みは‘相性’を意識し続ける事がとても重要だと感じております。

人と同じで、相性の悪い石同士は本当に合わないのです…仲の良い石同士を見つけていかにくっつけるかが、石積みの醍醐味とも感じております。

また、この現場で特に印象深かったのは…手すりのあるブロックの幅とちょうどぴったりの石と巡り会えた事でしょうか。これは使わない手はないと、思い切って繋げましたが…存在感もあり良い仕上がりになってくれました。」

かねてから、物や人との出会いの必然性について代表から伺っておりますが、そういった現場での石との出会いというものには運命めいたものを感じます。

「そう、そういった一期一会の積み重ねが、石積みの経験を通して私の技術と糧になってくれているのです。」



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