コラムColumn

vol.143 美里町T邸造園工事【後編】

2026/6/29

皆様こんにちは。清水園でございます。

今回のコラムは、「美里町T邸造園工事」についての後編です。

そこで、この現場では急きょ排水の仕組みをつくることになりました。敷地の中で最も低い場所に穴を掘り、そこを一時的に水と泥を集める場所とし、必要であればポンプを入れて排水できるようにしました。いわば簡易的な池のようなもので、道路に流れ出る泥水を受け止める役割も持たせたのです。さらに、ただ水をためるだけでなく、地中に水を逃がすための「点穴」も設けられました。地面を約1メートル掘ると下は粘土質で水が抜けにくい状態でしたが、その先をさらに探ると砂の層に当たったといいます。そこに向かって水を落としていけば、地下へ浸透させることができると判断されたのでした。

点穴のつくり方にも工夫があります。単に穴を掘って埋め戻しただけでは、泥で詰まってしまい意味がありません。そのため、まず割った竹を砂の層まで差し込み、さらに玉石を縦に積んで、石と石の隙間から水が流れるようにしていきます。最後に葉や有機物を入れ、泥が流れ込みすぎないように調整します。竹はやがて腐っても繊維の縦のラインが残り、水や根が通る道になっていきます。さらに根がその場所に伸びてくれば、粘土層の中に新たな通り道ができ、水抜けが良くなっていきます。昔から用いられてきた知恵ですが、こうした仕組みが庭の中に生きていることは、意外と知られていません。

この点穴の考え方は、城の石垣にも通じるそうです。石垣の上に松や桜が植えられているのは景観のためだけではなく、根の性質を利用して構造を守る意味もあるという説明です。庭づくりは見た目の美しさだけではなく、土地の条件、水の流れ、植物の性質まで考えながら形にしていく仕事であることが、こうした話からよく伝わってきます。

結果として、この美里町T邸のお庭では、排水の仕組みを組み込んだことで、大雨が降っても道路が泥だらけになることはなくなったそうです。完成から2年のあいだに何度も大雨があったものの、砂や泥が道路にあふれ出すことは一度もなかったそうです。つまり、この工事は単に庭をきれいに整えるだけでなく、現場で起きたトラブルに対応しながら、庭としての機能を立て直して改善していった工事でもあったのです。美里町T邸造園工事の話から見えてくるのは、庭づくりとは予定通りに進むものではなく、現場で起こる変化に応じて設計そのものを更新していく仕事だということです。木を残したいという思い、水漏れという想定外の出来事、大雨によって露わになった排水の問題。それら一つひとつに向き合いながら、最終的に景観と機能の両方を備えた庭へと仕上げていく。その過程そのものが、この庭づくりのいちばん大きな魅力なのだと思います。



点穴排水掘削 作業状況
大雨潅水 作業状況
植栽・景石設置 作業状況
大雨潅水 作業状況
排水池作成石積み 作業状況
池石積み 作業状況
排水池作成石積み 作業状況
土留めコケ張り 作業状況