vol.145 高所作業車での伐採
2026/8/11

皆様こんにちは。清水園でございます。
今回のコラムでは、「高所作業車での伐採」についてお話しさせていただきます。
木の伐採と聞くと、山の中でチェーンソーを使い、木を根元から切り倒すような場面を想像される方も多いかもしれません。しかし実際の造園の現場では、周囲の環境によって作業方法は大きく変わります。特に住宅や施設、フェンス、空調設備、ボイラー施設などが近くにある場所では、木をそのまま倒すことはできません。高さが20メートルほどあるような木であれば、倒れる方向を少し誤っただけでも建物や設備を傷つけてしまう可能性があります。そのため、トラックが入れる現場では高所作業車を使用し、上部の枝から少しずつ切り下げていく方法が基本となります。
高所作業車を使う大きな理由は、安全性と効率性です。木に直接登って作業する方法もありますが、作業員の負担や危険性は高くなります。高所作業車であれば、安定した足場を確保しながら高い位置まで近づくことができ、枝の向きや切断位置を確認しながら作業を進めることができます。もちろん、高所作業車を使えばすべてが簡単になるわけではありません。高い位置での作業は風の影響を受けやすく、切った枝が揺れたり、吊り下げた木材が思わぬ方向へ動いたりする危険があります。そのため、道具の扱いだけでなく、現場全体を読む力が必要になります。
今回のように、伐採対象の木が建物やボイラー、フェンスの近くにある場合、枝をそのまま地面に落とすことはできません。切った枝は一本ずつロープで吊り下げ、安全な場所へゆっくり降ろしていきます。その際に重要になるのが、プーリーと呼ばれる滑車の使い方です。プーリーをできるだけ高い位置にかけることで、枝を下ろす方向を調整しやすくなり、ロープが他の枝に干渉することも防ぎやすくなります。枝の重さ、長さ、落下距離を計算し、地面や設備に当たる可能性がある場合は、あらかじめ短く切ってから下ろすなど、細かな判断を重ねていきます。
複数本の木を伐採する場合には、さらに難しさが増します。単純に一本ずつ倒していけばよいわけではありません。木同士が支え合っていたり、枝が絡み合っていたりすることもあるため、どの木から短くしていくか、どの方向に力を逃がすかを考える必要があります。最後に残る一本が危険な状態にならないよう、全体のバランスを見ながら進めていくことが大切です。伐採にはさまざまな方法がありますが、どの方法が最も早く、そして安全なのかを見極めるには、現場経験が欠かせません。
高所作業車での伐採で特に注意が必要なのが、切断した枝や幹の重さです。枝一本であっても、実際には想像以上の重量があります。ロープで吊っている木材が揺れると、高所作業車も大きく揺れることがあります。自分の方向に木が倒れてこないように切断位置を考えたり、吊り下げた木材の動きを予測したりすることは、非常に重要な安全対策です。重いものを安全に降ろすためには、ポーターラップやウインチなどの道具を使い、重さを分散させながら慎重に操作します。力任せに引っ張るだけでは、体ごと引っ張られて事故や怪我をしてしまう危険もあります。
また、強風下での作業はさらに難易度が高くなります。風によって高所作業車が揺れたり、切った木が予期せぬ方向へ流されたりすることがあります。建物の反対側から風が吹いている場合、本来避けたい建物側へ木が倒れやすくなることもあります。そのような場面では、木にロープを一本、場合によっては二本取り付け、下げるロープと引っ張るロープを使い分けます。ウインチや人の力で木の動きを制御し、風に負けない方向に引っ張り角度を調整しながら作業を進めます。高所での作業は一瞬の判断が重要であり、気を抜くことはできません。
伐採作業では、作業員同士の連携も大きなポイントです。高所作業車で切る人、ロープを引く人、吊り下げる人、下で受ける人、それぞれが別々の動きをしているように見えて、実際には一つの流れの中で動いています。声を掛け合い、タイミングを合わせ、木材の動きを見ながら次の動作を決めていきます。ウインチの位置も重要で、トラックや重機の動線に近すぎるとロープが干渉し、作業の妨げになります。安全に効率よく進めるためには、木だけを見るのではなく、現場全体の作業内容で配置を考える必要があります。
断幹した後の処理にも手間がかかります。枝や幹はそのままでは運べないため、トラックやダンプに積みやすい長さに切り分けます。重すぎるものは、ヒアブ車で持てる重さに合わせて1トン未満になるように調整します。チェーンソーで切断すれば、大量の切りくずも発生します。場合によっては、雪かきスコップでダンプに積み込むほどの量になることもあります。伐採は、木を切った時点で終わりではありません。切った木や枝、切りくずをどのように運び、処分するかまで含めて、一つの作業として考える必要があります。
運搬の効率化の点で、ヒヤブ車は非常に効率的な手段です。大量の枝や幹をつかんで運ぶことができるため、処分場まで2tダンプで何度も往復する手間を減らすことができます。現場の近くでヒヤブ車が入れる場所に一時的に材をまとめて仮に置くこともでき、まとめて運んでもらうこともできます。また、太さや長さにある程度柔軟に対応できる点も大きな利点です。ただし、どんなものでもそのまま運べるわけではありません。重さには限界があるため、あらかじめ適切な大きさに切り分け、積み込みやすい状態に整える判断が必要です。道具の性能を理解し、現場に合わせて使いこなすことが、作業効率を高めることにつながります。高所作業車での伐採は、単に高い場所の枝を切る作業ではありません。木の重さを読み、風を読み、道具を選び、人の動きを合わせながら、安全に作業を完了させるための総合的な技術です。完成後の現場だけを見ると、木がなくなり、すっきりした景色だけが残るかもしれません。しかしその裏側には、建物を守り、人を守り、木の動きを最後まで読み切る職人の判断があります。大きな木を扱う現場ほど、力だけではなく、経験と段取り、そしてチームの連携が重要になります。高所作業車を使った伐採は、そうした造園の技術と現場力が詰まった仕事なのです。










