vol.142 フルハーネス【前編】
2026/5/19

ー 木に登る前に始まる、安全の準備 ー
皆様こんにちは。清水園でございます。
今回のコラムでは、「フルハーネス」について、お話しさせていただきます。
木に登る仕事と聞くと、身軽に自然の中を動き回るような印象を持つ方もいるかもしれません。けれど実際は、そのイメージとは大きく異なります。木に登る前の段階で、すでに体には多くの道具が装備されており、その一つひとつに明確な役割があります。今回のコラムでは、まさにその「木に登る前」の装備についてお話します。
まず基本になるのがハーネスです。一段のハーネスとツリークライミング用では用途がそもそも違い、前者は墜落防止で使用し、後者は樹上での移動及び作業用と使い方が全く違うハーネスにランヤードを取り付けます。これはワークポジショニング用のもので、樹上で作業しやすいように体を固定するための役割を持っています。もう一本違う用途のトップロープがあります。トップロープにぶら下がるだけでは、ロープの位置にまっすぐ支点の下に身体が持っていかれてしまうため、作業場所の近くに自分の身体を引き寄せ、姿勢を安定させるためにランヤードが必要になります。さらに、トップロープが木に直接擦れて傷まないようにするためのフリクションセイバー、木にプーリーを固定するためのスリング、カラビナ、プーリー、ロープ回収用の道具などが加わっていき、見た目以上に多くの備品で成り立っています。
ロープにも、それぞれはっきりした役割の違いがあります。体を支える側のロープは、ほとんど伸びないスタティックロープだと説明されていました。もし伸び率があると、ぶら下がった体が大きく揺れてしまい、安定した作業ができなくなるためです。伐採で木を吊るためのロープと、登っている人の体を支えるロープは、見た目は似ていてもまったく別物です。さらにトップロープの長さも、木の高さや作業によって使い分けられており、長すぎると使い勝手が悪いので5m、8m、10m、20m、30m、45mと、状況に応じて選ばれていました。道具は一種類で済むものではなく、作業ごとに組み合わせが変わります。こうした道具は便利なだけでなく、非常に高価でもあります。カラビナ一つでも4,000〜7,000円、何気なく見えるロープも10,000〜50,000円ほどすると語られていました。しかもロープは1本だけでは済みません。そのため、装備を揃えるには相当な費用がかかります。安いものもある一方で、高いものには高いなりの理由があり、安いものには安いなりの特徴があります。どの道具を選ぶかには、その人の考え方や作業スタイルが表れるのだと感じます。












