コラムColumn

vol.9 ZOUEN

2021/4/16

皆様こんにちは。清水園でございます。 さて、本日は以前こちらでお話させていただいた現代美術家の方との’出会いと依頼’、その後のお話しです。

かねてから⾃⾝の造園の技術やこだわり、取り組みを「新しい形で表現できる⼈」…コラボレーションの出来る⼈は居ないか、と考えていた代表。オンラインツールで全国の方とお話させていただいた中で出会った’現代美術家’の方に、作品の制作を依頼しておりました。

現代美術家のお名前は栗棟美里(くりむねみさと)さん。ご⾃⾝が撮影した写真を印刷した後に上から描画を施すといった、⼀点物の美術品を作ることを得意とされているそうです。

代表は、代表の愛する道具…昭和42年の刈込鋏と昭和39年よりも以前に作られた⼿鋏を撮影し、その写真の上に栗棟さんが描画を施す…といったコラボレーションでの制作を提案していました。先日、その作品が仕上がり代表のもとに届いたとのこと。

「とても素敵な作品が届きました。鋏の写真の上に、⾦を使って⽯積みの岩間を描かれているようです。

ご丁寧な解説⽂も頂戴しました。」

以下が、その解説⽂です。

タイトル|ZOUEN

素材|インクジェットプリント・オペークインク・金

造園に使⽤される刈込鋏及び⼿鋏の写真の上に、⽯積みの岩間のイメージを⾦で重ねたミクストメディア。《ZOUEN》はʼ造園ʼをはじめあらゆるモノ作りのあり⽅を表現するとともに、ʻ縁を造る/造縁ʼといったメッセージが込められています。

写真は、半世紀以上に渡り仙台で造園業を営む三代⽬により撮影されたもの。刈込鋏と⼿鋏は先代から引き継がれたもので、それぞれ昭和42年、昭和39年よりも前のものと年代物。仕事柄ʼ⼀番いい道具しか使わないʼ事をポリシーとしている代表の想いが、⼿⼊れの⾏き届いた鋏の煌めきに反映されています。

写真の上に重ねられた⾦は、代表が⼿掛けた⽯積みの岩間のイメージを描いています。

物と物とをʼ切るʼ事で新しい価値を造る鋏、物と物(岩と岩)をʼ積み重ねるʼ事で新しい価値を造る⽯積み、また物と物とを⾦でʼ繋ぐʼ事で新しい価値を⽣み出す⾦継ぎ。

切る・積み重ねる・繋ぐ…それらʼモノ作りʼの形が重なり合い、またʼモノ作りʼから⽣まれ繋がる縁によって、新しい価値観や世界観がまた創造されていく。

あらゆる表現の中で、ʼ⽬に⾒える物ʼが⽣み出される事に伴い、それら物物によって繋がるʼ⽬に⾒えない豊かさʼに想いを馳せます。

なるほど…「作る」ということを様々な⾓度から捉え、それを⼀つの画⾯に収めたのですね。メッセージも、そして作品の画⾯⾃体にも奥⾏きが感じられます…⾓度を変えながら、⾒ることを楽しみたくなりますね。

コラボレーションするにあたり栗棟さんが制作への想いを添えてくださったので、一部抜粋しお伝えしてまいります。

この度は素敵なご縁をくださり、誠にありがとうございました。

知人からの紹介で初めて清水園 代表様とお話させていただいたとき、造園でのお仕事をはじめ代表様のモノ作りに対する姿勢…思想や哲学に大変感銘を受けたことを覚えています。

清水園様に限らず、依頼を受け制作を行うことはあるのですが…ご依頼が決まる前から「どういった作品を制作するか」創作意欲が沸き立ち、代表様のモノ作りへの姿勢や世界観を様々な角度から作品に盛り込みたいという熱量は、なかなかこれまでになかった感覚のように感じます。

それはおそらく、モノ作りを超えたところにある「何を見てどのように感じるか・何を選ぶか・いかに生きるか」といった部分で代表様とお打ち合わせを出来たからかもしれません。

私は日頃、写真の上から違う素材を重ねる’ミクストメディア’と呼ばれるジャンルの作品を主に制作していますが(今作もそのようにして制作しています)、その根幹には、異なる要素同士が重なり合うことで生まれる相乗効果から、この世界のあり方や物事の本質を捉え直したい・見つめ表現したい…といった想いがあります。

とはいえ、(自身で選択してはいるのですが)平面でのアプローチには数々の制約があり、他のメディアを扱われる美術家・芸術家、あらゆる表現者の皆様への畏敬の念は常に持ち合わせている次第です。

造園のお仕事もまた同様で、「景観を作る」その壮大かつ重責を担うお仕事は大変尊いものと感じます。また、清水園様の挨拶にも書かれていた「家庭」のお話しも代表様から伺いましたが、’正解や優劣のない創作の世界だからこそ悩むことも多い’といった想いや、‘石積みでトップになる’と取り組んでこられた造園家としての自負の持たれ方は、現代美術家である自身としても非常に共感できるところが多く、今回の制作でも造園とは異なった、でも同じ’モノ作り’の要素を、作品に取り込めたのではないかしらと感じています。

自身にとっても大変意義深い制作・コラボレーションになりましたことを、大変嬉しく思っています。

素敵な作品と嬉しいお言葉の数々をありがとうございました。清水園としても今回のコラボレーションを通して、改めてモノ作りと向き合うことが出来たように感じております。

栗棟さんはミクストメディアをはじめ、映像・写真など様々なジャンルの作品を制作しておられます。先⽇賞も受賞されるなど、今後益々ご活躍が期待される現代美術家様です。美術品制作の依頼も受け付けておられるそうなので、ご興味のある⽅はぜひホームページ等からご連絡してみてはいかがでしょうか。

清⽔園も心から応援しております。



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