コラムColumn

vol.4 畑の石積み・隣の石積み

2021/2/9

皆様こんにちは。清水園でございます。

本日は、「畑の石積み」そして「隣の石積み」についてお話させていただきます。

数ある案件それぞれに思い入れのあるものと代表が語る中で、今回のお話は代表にとって「夢の原点」となる案件でございます。

さて、我々は日々あらゆる「名前」のついたものの中で生活をしております。それは「こちら」と「あちら」を分け、統治や情報共有するのに便利だからです。

そういった「線を引く」のに似た作業は、国境や県境、そして私有地にも適用されてきましたが、国や地域によっては、それが曖昧な場所もままございます。

「私の住んでいる界隈は、地続きで敷地の境目がかねてから曖昧なところがありました。お隣さんと我が家もその一つでした。そんな中、震災(東日本大震災)があり、その翌年に敷地の区分け(石積み・土留)においても丁度その時にお話が出ました。私としても心機一転、’全てをやり直そう’と思っていた最中でした。」

そう、代表の自宅も建て替えを余儀なくされている状況でした。震災の翌年、代表は敷地の全部を10年計画・毎年1月に改修工事を行うと決意し、取り掛かったと言います。

「畑の石積みにおいてもその一つなのですが…実はここに使用した石というのは、元々’庭の解体’から出たものなのです。庭石はコンクリートと違い、解体しても材料として再利用できる利点もあり、ある意味リサイクルとも言えるものです。」

件の震災で多くの爪痕が残る中で、ブロックは崩れど石積みは崩れなかった…という事もあり、庭の解体から出た石の多くが代表の元に渡り、一時は資材置き場もいっぱいになる程の量だったとの事。

「お隣さんの石積み・土留においても、それら解体現場から出た石を再利用させてもらいました。改めて石を買うことなく施工できた現場です。それでも尚余っていた石を、我が家の敷地に続く畑の改修にも使用しました。その後は石積みの強度の観点からか案件も増え、石でいっぱいだった資材置き場も空になるほどでした。」

天災にも耐え、また経年の変化においても味わいを深める「石積み」。その良さを改めて確認する機会にもなったとのこと。

「畑の石積みにおいては、高さ約2m・長さは約20m、手前から奥へ行くにかけて低い石積みになっていきます。着工前は法面に木が植えられている状態で、 畑へ登る道も急で登りづらい坂になっていました。

石積みと法面に植えられていた樹木を植栽し、 石積み前に土留めに使用していた古電柱を階段に再利用することで、坂も登りやすく、すっきりとした印象に仕上がりました。」

震災前、各所の庭で使用されていた石を再利用しての石積み。その魅力を再確認できる案件です。そして、「隣の石積み」に関してもこだわりが。

「これらの石積みは’今後高く積みなおせるよう’に積んであります。三段・二段それぞれの石積みは、頭が平らな石(天端石・テンバ)を外し間に違う石を足すことで、高くすることの出来るようになっています。角石に関しては、今はバランスが悪いのですが、将来石を高くした時に使える石を他の現場で使ってしまわないようにその場に低く積んであります。

また、実は位置的にこの石積みは、お隣さんのご自宅から直接は見えません。ですが、造園家である私からは毎日見える位置にあります。従業員やお客様、対外的に必ず目に止まるため、どこからも綺麗に見えるよう自負を持って積んだ石積みです。」

隣家だからこそ造園家としての想いも込められた石積み…また、ここには代表にとって「夢の原点」でもあるのです。

「私にはかねてから、’いつか小さな街を作りたい’という夢があります。それは、全体の統一された庭…自身の手掛けた庭で作られた街です。我が家も10年の改修計画から年々手が入って来ましたが、お隣さんを含めて二軒目。そして、丁度ここからそのお隣にもお話を頂き、今では三軒の’繋がる’庭を手掛けることができました。目標を達成する、とてもいい機会を頂いたと感じています。」

この「夢の原点」のお話は、代表が以前語っていた「家庭」への想いにも繋がるように思います。

「目に見えるもの全て’庭’だとするならば、やはり‘隣の庭’も綺麗であるべきだと考えます。」

家は必ず帰る場所、その居心地の良さを作る上で重要な「庭」。そこは、家庭の「中」だけではなく「外」へも繋がっているのだと、より広がりを持つ印象を抱きました。お隣さんとの区分けとなる石積みも、「分ける」という役割以上に「繋がり」や統一感を感じさせる…そのような見方が出来るように感じます。

個々の庭が繋がり、分かれていたものが繋がる事で、また新たな世界が生まれる。庭が広がり街に、世界へと変わっていく様子を想像すると、造園の仕事の豊かさに改めて心躍ります。

「畑の石積み・隣の石積み」のお話、お楽しみいただけましたでしょうか。また今後も様々なエピソードを皆様にお伝えできればと思います。



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