コラムColumn

vol.93 大きな石を使った石積み

2024/2/27

皆様こんにちは。清水園でございます。

本日お伝えして参りますのは、弊社が平成28年に手がけた「大きな石を使った石積み」の現場について。朴木山(ほおのきやま)にございます、東北福祉大・西田中キャンパスでの石積みです。

「総計で約40mと非常に長い石積みとなりました。最近では大きな石を使用した石積みの現場もほとんどございませんので…こちらが事実上、私の手がけた大きい石積みでは直近のものでしょうか。石の運搬に1週間、その後1週間から10日ほどかけて積み終えた現場でございます。写真で見るとそこまで大きくは感じられないかもしれないのですが、石はそれぞれ一つ2〜3m程の大きさ。大きな石ですので一度積むと進みが早いのが有難いですね。一方で、隣同士の石の合場を合わせる所が多いなどリスクも大きくはあるのですが…とはいえ、小さな石には決して出せない迫力と存在感・魅力が大きな石積みにはございますね。」

石積みは2段に分かれており、中央の通路を挟むような形で両側に石積みがあるような設計だそう。水捌けの悪い現場だったようで、排水に関しても随分苦労されたとの事でした。

「排水が悪いからこそ、なおのこと小さな石より大きな石の方が石積みに向く現場でありました。と申しますのも…水が流れた際に、小さな石ですと動く恐れがあるのです。大きな石を使用し自重で動かないように考えるのが、水捌けの悪い現場ではセオリーなのです。」

12トンのユンボを使用し、トラックより荷下ろしして参ります。こちらの石は元々違う現場での発生石だったそうで、それらを片付ける目的も兼ねて今回の現場で再利用するに至ったとの事。

「大きな石は主役になりやすいですから、置き場所も考えて積んであげる必要がございます。また、石積みの‘角’を決めるというのも非常に重要なポイントで、石自体の角が直角でなければ角石として使用することができません。どれだけ石の数があっても‘そこにしか使えない’といった場合がほとんどなので、設計上角のある場合は、事前に角石を探しておかなければならないのです。」

また、植栽はサツキとサクラを中心に植えられたそう。実はこの植栽もまた排水計画の際重要なポイントとなるそうで、植物が育ってからの‘根の張り方’を工夫して植栽することで、強固な地盤を作ってくれるとの事。

「例えば、サツキは広く浅く根を張る植物ですので…石と土をガッチリと噛んで動かさないようにしてくれます。土の表面を守ってくれるんですね。一方でマツなどは直根性の植物ですから、石の下に真っ直ぐ根を張ります。サツキの更に下の層をサクラが守ってくれるのです。このように浅い根の植物と深い根の植物を混ぜて植えるのもまた技術の一つなのです。」

なるほど…ただ石を積む・置くだけではなく、植栽を含め様々な要素が絡み合うことで一つの空間・現場が出来上がっているのですね。

「そうなのです。表面的・景観的なものだけではなく、非常に実用的かつ長期計画なのが石積み。また、私は石の声が聞こえるわけではありませんが…大きな石積みも完成すると「収まるところに収まった…適材適所だな。」という事を感じさせられます。ブロックと違い、石はその全てが違う形や大きさ。同じ人でも全く同じ積み方や配置が出来るわけではありません。そういった意味でも‘石積みは奇跡の産物’なのだなと…積んだ本人としても感動することが多くございます。」



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