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vol.142 フルハーネス【後編】

2026/6/2

[後編] 安全作業を支える装備と確認の重要性

さらに欠かせないのが、チェンソーストラップとチェンソーパンツです。チェンソーストラップは、チェンソーを地面に落とさないためのロープで、作業する際伸びる構造になっています。木の上では、枝に身体が引っかかったり、ロープがからまったりして、地上では起きにくいことがなぜか普通に起こります。そのため、このストラップはとても重要な道具です。また、木に登る時はチェンソーに必ずカバーをつけて登る必要があります。刃が太ももの裏に当たり続けたり、樹上であちこちにぶつかったりして、自分の体も刃も傷めてしまうからです。面倒でも、使う時だけ外し、使い終わったらまた装着するという動作が欠かせません。

チェンソーパンツについての説明も印象的でした。AクラスとCクラスがあり、多くの人は前面のみを守るAクラスを使用しているそうです。もしチェンソーが当たったらどうなるのかという問いに対して、答えは「足は切れない」でした。内部の繊維がチェンソーに絡みつき、刃を止める仕組みになっているためです。その代わり、チェンソーの内部は繊維で絡まり、復旧に時間がかかるほど大変な状態になるそうです。それでも、体を守るための装備として大きな意味があります。価格が上がるほど、重さが減り、ストレッチ性が高くなり、涼しく、丈夫になっていきます。反対に安いものは厚く重く、ストレッチ性が劣り、登りにくい傾向があります。安全性だけでなく、動きやすさにも価格差が表れることがよくわかります。

こうしてすべてを身につけると、全装備で10〜13kgほどになり、さらに太い木を切るための長いトップロープやチェンソーなどを加えると20kg近くになることもあるそうです。しかもそれが軽装備に近い状態であり、さらにロープを2本、3本と持てば、そこからもっと重くなります。木に登るという行為は、決して身軽なものではありません。危険な仕事を安全に行うために、これだけの装備を体にぶら下げているのです。

そして何より大切なのは確認です。木に登る前と、降りてきた後には、ロープを必ず伸ばして、ほつれや傷、切れかかっているところがないかを確認します。ロープは命に直結するからです。トップロープも、ヒッチコードの結び方が間違っていればブレーキが効かず、そのままずるずる落ちてしまう危険があります。そのため毎回体重をかけ、ブレーキが効くかを確認してから樹に登り始め作業します。途中で枝に引っかかるなどして状態が変わることもあるため、その都度確認しながら作業することが大切だとわかります。道具そのもの以上に、その扱い方と確認の積み重ねが安全を支えているのです。

さらに、ツリークライミングで最も危険なのは、トップロープを掛けた枝が折れることだとも語られていました。そのため、何かしらのロープをもう一本掛け、最悪の場合でも落下を防げるようにしています。ロープは緩ませず、常にテンションをかけた状態で作業することも重要です。そうすることで、万が一落下しても最小限の距離で止まることができます。こうした話を追っていくと、フルハーネスとは単なる装備の名前ではなく、危険な仕事を安全に変えるための考え方と命を守る装備そのものなのだと感じます。木に登ること自体が目的ではありません。そこで仕事をするために登る。その現実を支えているのが、この重く、複雑で、そして欠かせないフルハーネスなのです。