コラムColumn

vol.109 剪定作り替え

2024/9/30

皆様こんにちは。清⽔園でございます。
本⽇お伝えして参りますのは、ʼ剪定作り替えʼについての内容です。


最近よくある話ですが、今まで管理していた庭師が加齢により引退し、途中から代わって管理のご依頼を受けることがあります。今回のお庭は、管理されなくなってから2年程放置されていましたので、枝葉が⽣い茂ってもさもさした状態でした。前の管理業社が刈り込みばかりして、ぎゅっとしまっているような⽊だと、本来の姿に戻すのに多くの不具合が出てきます。


庭の管理をするにあたり、「剪定」と「刈り込み」という⽅法がありますが、刈り込み鋏で枝をバチバチと細かく切っていく「刈り込み」を⾏うと、切ったところから枝が増えていくので、枝を増やしたい成⻑期には有効な⽅法です。ですが、成⻑期が終わり安定期に⼊ってくると枝が増えて密集し、⽇当たりが悪い内側は枯枝がでたり、枝が固くなって刈り込み鋏で刈れなくなってくるので、⼩さくしづらくなってきます。そのため、成⻑期が終わった後も、枝抜きや透かし剪定などでいかに同じ⼤きさで保っていられるかが重要になってきます。管理をせずに⻑い期間放置されると、枝葉がどんどん成⻑して原型が分からなくなってしまいます。特に、松の場合は陽樹で⽇陰が⼤嫌いな⽊なので、葉っぱが増えすぎると内側の枝葉に太陽が当たらず、その部分は枯れて枝がなくなってしまいます。そのため、いかに枝葉の成⻑を抑制しつつ同じ⼤きさに保てるかが庭師の技術と知識の⾒せ所です。⽊の種類は何なのか、どのような形で保つのかにもよりますが、落葉樹などは最低でも2年に1回、松の場合には年に1、2回剪定を⾏えば同じ形で保つことが可能です。特に松の場合には、⼀度⼿を⼊れてしまうと剪定したなりに育っていくので、定期的な剪定が⽋かせません。
今回のように枝葉が⽣い茂った状態になってくると、⼀度リセットする必要があります。庭の⼤きさや予算にもよりますが、S家の庭の⽊はこのように育てていかなければならないというような感じで、好き勝⼿に伸びないように⽊々に伸びる⽅向などを教え込んでいきます。


また、たくさんの枝葉を切ることで、剪定の際には⼤量のゴミが出ます。このゴミを捨ててしまわずに、機械で粉々に砕いてチップ(肥料)にして地⾯に敷くと、ゴミの減量に加え、地⾯の乾燥防⽌にもなります。チップにする際の機械の⾳が⼤きいので、場所によってはできない場合もありますが、できる限り肥料として再利⽤し、ゴミの減量化につながるよう努めています。ゴミの減量化を⽬指すにあたっては、今までの剪定のやり⽅ではダメな場合もあるので、新しい⽅法を試していかないとダメな時代になってきているのだと感じています。「捨てる=燃やす」ということなので、施主様にとっても、お⾦を払って⼆酸化炭素を排出しても何の利益にもなりません。“前からやっているから”、”昔こう教えられたから”ということを⾔い続ける庭師も多いのですが、昔通⽤していたことが今も通⽤するとは限りません。今までの凝り固まった剪定の仕⽅ではなく、時代の変化と共に新しい技術や考え⽅が出てきているということを造園業者全体で共有していくことも必要なのだと感じています。

新規のお客様に相談される際に、”⽊の⼤きさを⼩さくする“という考え⽅を分かっていない庭師や施主様があまりにも多いと感じています。施主様から⽊を⼩さくしてほしいという要求が多々ありますが、⼩さくできない庭師が本当に多いです。ボツボツ切って⼩さくするのか、形をとんでもなく悪くして⼩さくするのか、形を保ったまま⼩さくできるのかでは、資産的な価値が⼤きく変わります。庭師としての技術や知識が⼗分でない場合には、⼩さくできる⽊と⼩さくできない⽊があるのに、⼩さくできない⽊を無理やり⾃⼰満⾜で⼩さくして形を悪くし、施主様に「こんなのを望んでいなかった」と⾔われてしまう場合や最悪の場合は⽊が枯れてしまう時もあります。⻑い⽬で⾒て⼩さくしなければならない場合には、その道標をお客様に教えてあげられるか否かが、庭師としての技術、意識の差でもあります。


単に剪定作業を⾏うだけではなく、環境のこと、施主様のこと、造園業全体のことなど、様々なことに配慮し、時代と共に変化して対応していくのも私たち庭師の仕事なのだと思います。



着工前
着工前
完了
完了
剪定枝チップ加工