vol.48 東北福祉大学 スロープ石積み工事
2022/7/19
皆様こんにちは。清水園でございます。
本日お話しさせていただくのは、代表曰く「東北福祉大学で手がけた現場の中でも、一二を争う辛い現場だった…」との事。
一体全体、どのように壮絶な現場だったのでしょうか。
「この現場は、以前にもお話しした階段の改修工事とモミジ移植の隣…3期工事でございます。以前は階段だったところを、壊してスロープにする…といった内容の現場です。」
東北福祉大学の敷地中央には3号館という建物があり、階段があった当時車椅子の方は非常に遠回りをしてその建物にいかなければならない…といった課題がございました。
それに加えて階段自体も老朽化していたこともあり、スロープにすることとなった次第だそう。
「既存の階段は16段、高さにするとおよそ2m50cmです。細かなお話にはなってしまいますが、そこをスロープにする際5%の勾配で1mで5cmずつしか上がれません。
要するに、結構な距離のスロープをこの中に作らなければならない…という具合です。結果的には、ずっと奥の方まで削って勾配を取ることに致しました。全体でUターンするような作りですね。」
完了した現場のお写真を拝見すると、確かになだらかな勾配が右から左、左から右へと奥へ奥へ続いている事が分かります。
現場の着工前後のお写真を拝見すると…階段が除かれた分地面が下がっていたり、元々地面の高さだった所に石積みが施され、やはり地面全体が下がっているように思うのですが…
「まさに、階段を除いたところや、石積みの高さの分地面を削って下げました。紅葉や木々の場所はそのままに、地面だけ下げている状態です。」
地面を掘り下げる…想像しただけでも骨が折れそうです。こちらは、前回お話しいただいた‘通路拡張石積み’のように、道路屋さんが削ってくださったのでしょうか。
「いえいえ、ここは私自身で手掛けました…そして大学ですから、夏休み中の施工といつも以上の突貫工事でございます。
毎日夜10時まで残業して、最終日も夜10時まで残業して…ようやく完成した現場です。お盆休みや日曜日も返上でした…この工期でよくやったものだと、我ながら振り返ってみて思う次第です。」
‘一二を争う辛い現場’…まさに文字通り、大変な現場だったのですね。
「地面を掘ってから石積みを行う際、元の地盤の高さと道路の幅1m35cmは必ず確保しなければなりません。
左右どちらかが出てしまえば、どちらかを引っ込めなければなりません。
石はなるべく垂直に、ですがカーブが多いので…小さな石を使い野面積みに近い崩れ積みで高く積んでいるという…石積みだけでみても難しい現場であることには違いありません。」
石は手で、3〜5段でなるべく後ろに下がらないよう留意しながら積まれたとの事。高木の根を出来るだけ削らずに行う石積みですから、幅もほとんどない事を見るとかなり制約が多い現場であることが分かります…
「実は、古い階段まで続く通路側の石積みは…清水園の初代が手掛けたものでした。階段を壊すために木などは移植、石積みも…なるべくバラバラにはしたくないものの一度撤去致しました。
新しいスロープの地形に沿うように、初代の石積みが残った部分に私の石積みを繋いで参ります。なるべく違和感のないように、同じ積み方で積むのがポイントですが…これがまた難しいもの。
私は石挟み(石と石の間に植物を植える技法)が苦手なので…サツキ一つ植えるのにも苦労致しました。」
本来石積みは、崩れることや力のかけ方の関係で下から積んでいかなければなりませんが、石を積むに従い大きな重機が入れなくなる…との事で、より効率良く作業を進めるためこの現場では半分ずつ上から順に石積みを施されたとの事。
「レアケースですが、やはり大きな機械でできることの作業量を考えると…セオリーからあえて外れる必要も出て参ります。
最初に石積みのアウトラインを決めてから積んで参ります。スロープでの石積みですから、Uターンすることもあり左右両側から見える石積みです。道路幅を確保する事も加味しながら、前後出しすぎることのないよう、慎重かつ迅速に積み進めます。」
小さな石でカーブを取っていくため距離が長く、積んでも積んでも進まなかった…という辛い石積みだったとの事。カーブなので距離もその分必要な為、いつも以上に気力が求められる現場です。
「時には加工も施しながら、また、大きな石も使いたくなりますので…引っ張ってくるなど様々な作業を同時に行なっていきます。
景石となる石は一番最後の方に設置致しましたが…この石を選んだ時は自身の美意識にどうしても抗えなかったといっても過言ではありません。
効率的に考えれば、もっと小さな石でも構わなかったのです。ですが…石置き場で自身が’かっこいい’と思った石を見つけてしまい、その石以外持って行きたくなくなるのが私の性分。
2トン500キロの石を、コロ引きしブロックチェーンを使用し設置しました。ですが…ここで妥協してしまっては、‘妥協した作品’を残してしまうことになります。後から訪れ振り返った時に、‘この石を置いて良かった’と思える仕事をしたい…そのように思います。」
その後は、元々平板の石を一度剥がして仮置きし、石積みも終了した頃路盤と同じ場所にスロープへ並べ直し、植栽の型枠を組み、アスファルトと石積みの間に植栽を仕上げて完成…との流れだったそう。
夏休み期間中という短い工期の中で、これほどの作業量…頭が下がります。
「そもそもこの工期で無事に終えられた事が、我ながら奇跡のように感じております。階段をスロープに変えたい…言葉にする事は簡単ですが、やはり作る人は大変な現場でしたね。振り返ってみて、もちろん今だったらもっとこうするのに…なんて思うこともございますが、その当時では100%…その時の精一杯を形にした作品だと感じます。」
車椅子で生活する学生達が、より一層素晴らしいキャンパスライフを送れていれば幸いです。