コラムColumn

vol.39 本校モミジ移植・本校階段改修工事

2022/3/29

皆さまこんにちは。清水園でございます。

時節柄、学校に通われている皆さまは卒業式を迎える頃でしょうか…学舎の風景というのは多くの方の思い出の中に刻まれていることと存じます。

本日お話しさせていただきますのは、代表がかつて手がけた東北福祉大学国見キャンパスの「モミジ移植・階段改修工事」のお話でございます。

「まずは、モミジ移植のことからお話ししていきましょうか…実はこのモミジ、私が平成4年に初めて移植をしてから、同じ敷地内で3回お引越しを繰り返しているのです。学内の改修工事に伴い…ですので致し方ありません。まして、伐採という手段でなく移植ですから、樹木を大切にする施主様の意向は尊重したいものです。」

確かに、モミジの大きさからしても象徴的でとても印象に残ります。秋の紅葉では、校舎を紅く彩っていたことでしょう…。

「後日、階段の改修工事も決まっていましたのでそれに併せて移植も進めて参りました。掘り取る際には、周りの状況や植物の根を傷つけないように重機や手掘りで行います。移動先には既にまた立派な松が植わっていましたので、松と紅葉を同時に掘り、石積みを外して根巻きを行いました。

松は校外の別の場所に植え、モミジは次の週に植える…といったような段取りです。」

モミジの移動は15m程との事。

「とはいえ、5mでも1kmでも動かすためには根を巻かなければいけません。これは植物の生命力の恐ろしいもので…根を適当に巻いても枯れないものもあれば、丁寧に手をかけても枯れるものもあるのです。傷予防や日焼け・乾燥防止のための幹巻きもしっかりと行います。

今回、最終的には大型クレーンでモミジを吊り上げましたが…8トンもの重さでした。ここまで大きな木の移植は、毎回とてつもない緊張感です。芯材が木に食い込まないように、帯もしっかりと巻いてあります。麻紐を引っ張りながら、木槌で叩いて締めていくのですが、帯と幹に隙間なく完全に密着させることが大切です。」

移植先の穴に無事に収まり、モミジは現在11年目…お引越しから第四の青春を謳歌しているとの事。

「学生さん達のキャンパスライフにおいて彩りとなっていれば幸いです。さて、その後は階段の改修工事が控えていました…こちらを手がけたのは、平成24年・大震災の次の年です。大変な被害でしたから、大学も改修工事が追いついていないのが現状でした。階段は地震でヒビが入ったり剥がれたりしたところがそのままでしたり、元々の場所も日当たりが悪く雪が凍って滑りやすいのも難点でした。

せっかく直すのだから、歩きやすい階段にしよう…という事で施工が進んでいきました。仕上がりは道路とそっくり、段差がほとんどない幅広い階段に仕上がりました。車道と歩道を分ける意味合いで、スロープではなく階段に仕上がっています。」

確かに、石積みや植栽も相まってとても素敵な仕上がりです。

「一段あたりの蹴上が約2m、なかなか距離の長い階段です。元々10段だった階段を、12〜13段程度に増やしてもあります。」

階段の側面を彩る低木や随所にある高木などは、再利用の為一度移植・仮植えを行われたそう。また、最終的に石積みで使用した石は、福祉大学のキャンパスから採掘した現場発生石を使用されているとのこと。

「石積みに使用する石は、新しく購入したものや他の場所から採れたものですと輸送にも費用がかかってしまいます。ですので、なるべく現場発生石…地産地消での施工を行うように致します。また、コンクリートの土留を好まない施主様もいらっしゃいますから、一度出てきた石はストックしておいて石積みを行うことも多いです。」

福祉大学のキャンパスから採取された石は、特に名称はないものの代表曰く「国見石」と愛称で呼んでいるとのこと。

「噴火して急に冷えて出来た石なのか…国見石はそこまで硬くはありません。見えない箇所にヒビが入っていたりすると、寒い時期に凍結・膨張を繰り返して突然割れたりすることもございます。ですので、ヒビを縦方向に使わないよう留意致します。

ヒビが入っている時は、割れても大丈夫な箇所で使用するなどしています。配慮が必要な国見石ですが…経験上、国見石を使用することも多く、他の現場発生石を含め石の扱いをはじめ石積みの経験値を上げてくれたように思います。」

この現場期間中、次週お話する「第36回造園感謝祭」が開催されたとの事で、代表は数日現場を離れ戻った後に石積みを行われたとのこと。既存の石積みの高さに合わせて石積みを行ったことで、法面の角度が急になり対処が必要だったと語ります。

「板を階段状に入れ、その板が見えなくなるようにサツキを植えることを心がけました。玉竜など地比類を植えた後、平板ブロックと階段の蹴上を似た印象にするために砂利の‘洗い出し’を行いました。」

洗い出し…コンクリートが乾く前に洗う作業とのこと。砂利をセメントで練ったものをコテで塗り、表面が乾き切らないうちに水で洗うことで、砂利の表情が現れてくる…装飾と滑り止めを兼ね備えたものだそうです。

「素材の自由度が高く、長期において綺麗な状態を保てる伝統的な技術です。階段の蹴上は長く面積も広かったので…洗い出しに向いていました。施工も春休み中に終了し、卒業式にも無事間に合いました。学生さん達の思い出の中に、あの階段と木々達が印象に残っていると嬉しい限りです。」

様々な要素や技術を駆使しながら、一つの風景や景色を作り上げる…それは同時に人々の思い出や記憶を作ることにも繋がるのかもしれません。



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