コラムColumn

vol.28 道具-刈込ハサミ柄交換

2021/11/30

皆様こんにちは。清水園でございます。

さて、清水園では新入社員の教育にも力を入れております。技術は継承する人がいてこそ後世に受け継がれるもの…造園もまた然りでございます。

仕事を通して繰り返し身につく技術もあれば、日頃使用する道具の手入れもまた大切な作業の一つ。本日お伝えいたしますのは、道具の手入れ…「刈込ハサミ柄交換」についてでございます。

「先日、たまたま新入社員の使っていた刈込ハサミの柄が折れてしまい直し方を教えてあげておりました。自分の道具に関しては、大抵のものは自分で直せないと自分のものと言えない…壊れたというのは、それを直しなさいという思し召しだよ、というように伝えております。また、たまたま自分の柄にヒビが入り直すことになった為、なかなか一般の方にご覧いただく機会も少ないと思い、写真にとって記録していた次第です。」

確かに…日頃我々が目にするのは、手入れされた草木のみ。道具に関して目にする機会は少ないように感じます。そもそも、ハサミの柄が交換できるということも恥ずかしながら存じ上げませんでした…。

「そう、刈込ハサミというのは金輪と釘だけで柄とハサミが固定されているので、ここを外せば交換が可能なのです。また、釘の場所が支点になってハサミは開閉するので、柄が割れるのも釘の場所が基準に割れることがほとんどです。」

代表曰く、交換する柄は剪定で出る枝をストックしておくとのこと。最初にナタで大きく削ってから、銑(セン)という道具で木の皮を削り丸く仕上げていくそうです。

「刈込ハサミは、本来の持ち方として右手と左手では持ち方が違う…という特徴がございます。刈込ハサミの柄を直すとはいえ単純に真っ直ぐ仕上げるのではなく、自身が持ちやすいように仕上げなければ、道具としての機能性を失ってしまいます。木の選定から削り方まで、丁寧に進めていきます。」

木を削り終えたら刃を入れるための切込みを入れていきます…ここもまた、縦に木を切るというのは難易度が高い工程です。

「細い木を割らないように切るというのがまた、緊張感を伴いますね。その後古い柄を抜くために釘を抜くのですが、釘も鍛冶屋さんお手製のものですので打ち直し再利用していきます。釘穴までの距離を測り正確な位置に穴を開け、仮止めをし、問題なければ次に金輪がはまるかどうかを確認し、はまれば穴の場所まで打ち込んでいきます。」

当初左側のみ交換の予定だったものの、バランスを見て左右両方交換されたとのこと。新しい柄というのは、無垢な印象が魅力的ですね。

「最終的には補強の目的で銅線を巻いていきました。刀やナイフの持ち手を巻くときの滑り止めの巻き方で、耐久性と美的観点から銅線で巻いていきました。

とはいえ使用しているとなんだか違和感を覚え…結局パラロープで巻き直した次第です。巻く方はあまりいらっしゃいませんが、他との差別化と美しさの追求という観点から…巻き出すと止まらなくなってしまいました。」

道具を自身のものとしてこだわり手入れし持つこと…職人としての魂が道具の細部に宿っているように感じます。



長年使用している刈込ハサミですが、平成15年に購入して以来刃も欠けることなく今までしようしてきましたが、とうとう柄にヒビが入り違和感を感じるようになったので、柄を交換する事になりました。
左側の柄は完全に上から下までヒビが入っています。
仕事で剪定する際、何かに使えそうな枝は捨てずに取ってありますので、壊れた場合でも材料等でそんなに困ることはありません。
この2本が合いそうなので、今から加工して柄にしていきます。
まずは鉈で大きく削り何となくの形にしていきます。
何となく細くなってきました。
次は木の皮などや桶の材料を削る珍しい道具で 丸くなるように削っていきます。
何となく形になってきましたが、 好みの太さ、カーブになるように削っていきます。
大体できました。ちなみに個人的には左の手は縦に持ち右手はやや斜めにつかむので、左右対称の柄よりは曲がっている方が使いやすいと思います。
次は古い柄を外していきます。固定されている釘を外せる程度にラジオペンチで起こします。
固定くぎを抜きます。
釘と言っても鍛冶屋さんが 止めるように作ったものですので、当然再利用するので、叩いて真っ直ぐに直してまた使います。
真っ直ぐに直りました。
柄を叩いて外して行きます。もう抜けるところです。
やはり柄の釘の部分から割れていました。
古い柄を外したところです。
新しく取り付ける柄に穴を空けます。この部分がずれると固定くぎを打てないので、キチンと計って穴をあけます。
とりあえず開けましたが、表の穴は大きく裏の部分は小さい穴になりますので、小さい穴をあけてから表の部分を少し大きなドリルで穴を空けます。
一度ちゃんと入るのか確認してから取り付けます。ここで無理をすると柄が折れる場合があるので、 仮組をした方が無難だと思います。
縦の切込み部分が広がって仮に釘が入ったので、取り付けに入ります。
金輪がキチンと入りかつ奥まで刈込本体まで入らないと取り付けできませんので、緩くても折れる原因になりますので注意が必要です。
金輪が入り本体に取り付けます。
穴の場所がわからなくなるといけないので、印を付けておくと目安になります。
穴がぴったりの場所に入りました。
新しい柄が付きました。後は長さを揃えるだけです。
柄を着る準備をしましたが もう片方も交換することにしました。
先ほどの流れでもう片方も交換し、右側は折れないように銅番線で補強しました。
長さを揃えて完成です。
柄をヤスリ仕上げをして指の形や持ちやすいように微調整しながら削ります。
完成したのですが、番線巻きが美しくなかったのでやり直しするため外しました。
1回目はだだくるくる巻いただけでしたが、2回目は交差部で1回ねじる巻き方で巻いていきます。 2・3回巻いたらハンマーで 内側に叩きながら、針金をキレイにそろえていきます。
巻き終わりです。末端は素手で持ってもいいように内側にきれいに曲げて入れていきます。
銅番線巻き完成
パラロープ巻完成 銅番線比較