vol.34 ソテツワラ巻き
2022/1/25
皆様こんにちは。清水園でございます。
本日お話しして参りますのは ’ソテツワラ巻き’ 。ソテツといえば、ヤシの木のように葉が広がる常緑低木。日本では九州南部、沖縄および中国南部に多く見られる植物のようです。
さて、そんなソテツにまつわるお話がなぜ宮城・仙台を拠点とする弊社でお伝えするかと申しますと…10年前、奄美大島の村長が寄付してくださったソテツが仙台市に存在するのです。
「ソテツは基本的に温暖な気候・土地の木ですので、保護のためにもワラ巻きは必要です。かつては資産家の方々が、南国の珍しい木を植えている…ということもあり、シュロの木などワラ囲いする習慣はございました。
とはいえ、ソテツワラ巻きの北限は埼玉と言われているほど…私自身仙台でここまで元気なソテツを拝見したのは初めてですし、そもそもソテツワラ巻きのノウハウを独学で習得しなければなりませんでした。」
代表曰く、(地域柄当然といえば当然なのですが)近隣にソテツワラ巻きの出来る方がいらっしゃらなかった為、ソテツワラ巻きの依頼を初めて受けてから10年間、試行錯誤の末ほぼ独学で行っているとのこと。感服致します…
「嬉しかったのは、2年程前偶然本家の方にやり方を尋ねる機会があり…試行錯誤・独学とはいえほとんど同じやり方でソテツワラ巻きを行っているようでした。
ソテツワラ巻きは下地が一番肝心です。中が真っ直ぐ平らだと結びやすいのですが、ラッパ型になっていたり表面が凸凹だとワラが大変巻きづらい。ですので、まずは表面をなるべく平らにしていく作業から始めていきます。」
最初に、天を仰ぐように広がる葉を縄で収め巻いてから、次に下地にするための竹を割っていきます。最終的には ’コモ’ といってワラがシート状に編まれたものをソテツに巻き付けていくのですが、そのコモがなるべく巻きやすいように…表面を平らにしていくのだそう。
「コモは軽く、風ですぐに飛んでいってしまいますので…丁寧かつ手早く作業を進めていきます。また、やはり仙台の冬は寒いのでコモは2枚重ねて巻いていきます。
竹を土台にしながら順に巻き、最後は頂点にワラボッチを被せてあげます。コモの余分な部分を切り揃えて完成です。」
完成したワラ巻きはオブジェのようで、まさに冬の風物詩…とても印象的です。
「前回お話しした冬囲いなどは、木の上部だけに葉をつけるダイスギ(北山杉)に行うこともございます。また、こういったソテツワラ巻きを模したようなものを、装飾的な意味合いで個人のお宅に飾ることもございます。
’冬景色’ とも呼ばれていて、無くても構わないのですが有ると綺麗、素敵…と目に楽しいものの一つですね。
今後、地球温暖化や高齢化などでいずれ途絶えてしまう技術かもしれませんが…少なくとも私が手掛けられるうちは、仙台の冬景色を彩っていきたいですね。」
我々が季節の移ろいを楽しみ、また冬の訪れが心待ちになるのも…造園家の方々のおかげなのかもしれません。