コラムColumn

vol.131 青葉区K邸でのお庭づくり

2025/10/27

皆様こんにちは。清水園でございます。
今回は、「青葉区K邸でのお庭づくり」についてご報告いたします。
今回の施工内容は、ちょっとした植栽と築山の制作でしたが、現場にはいくつかの難題がありました。そのなかでも特に大きな課題は、「水捌けの悪さ」でした。

K様邸のお庭は、元々水の流れが悪く、雨が降ると水が溜まりやすい状況にありました。水捌けを改善する方法としてはいくつかあります。たとえば、透水性のある暗渠パイプを埋設する方法や、庭全体を盛土して水たまりができないようにする方法、あるいは表面排水で地上から水を逃す方法などが挙げられます。今回は、地中に溜まった水の処理が難しい構造であったため、最終的に「盛って逃す」という方法で施工を進めることにしました。

一般的に、建売や注文住宅では、家本体にお金をかける一方で、外構や庭土に関しては後回しになりがちです。表面からは見えないこともあって、踏み固められた硬い地盤のまま放置されていることも多く、そこに植栽をするには何かしらの工夫が必要になります。K様邸も例外ではなく、お庭の奥にはブロックが積まれており、かつ水抜きパイプの稼働状況が不明でした。これではまるで「プールの中に土を入れている」ような状態で、水が溜まりやすくなってしまいます。浸透してしまった水を地中から逃がす手段がないため、染み込む前の段階で表面排水として外へ逃がすしかありません。つまり、「できるだけ雨水を浸透させない」ことがポイントとなる施工でした。

今回の施工において、もう一つの難しさは、既存の紅葉の木の存在でした。この紅葉がなければ、排水の勾配もシンプルにできたのですが、移植するとなると、たった50センチの移動でもそれなりの費用がかかってしまいます。限られたご予算の中で工夫しながら施工を進める必要があったため、紅葉の位置はそのままにしつつ、どう排水計画をするか、かなり頭を悩ませました。

そんな中、施主様からは「お庭にちょっとした変化がほしい」とのご要望もいただきました。そこで、紅葉の横に石を配置し、築山のような盛土をして、ウッドチップで仕上げるという提案をさせていただきました。こうすることで、視覚的にも奥行きが生まれ、立体感のある庭景色を演出することができました。

一般的に「家付きの木」と呼ばれる、建物のすぐそばに植える樹木については、建築家と植木屋で意見が分かれるところです。建物に近い分、落ち葉で壁が汚れたり、雨樋が詰まったりするという理由で敬遠されることもありますが、私たち造園屋の視点では、家の陰影や奥行きを活かすために好んで使うこともあります。特に葉を透かして光が差し込むと、空間が広く、奥行きを感じられるようになり、庭全体がぐっと豊かに見えてくるのです。

また、当初K様邸のお庭には、紅葉の木が一本あるのみで、道路や隣地からの視線を遮るものがありませんでした。そこで、将来的に目隠しとしても機能するようにと、常緑樹であるシラカシを数本植栽させていただきました。すぐに視線を遮れるわけではありませんが、時間をかけて育っていくことで、庭に緑の壁をつくってくれる存在になります。成長を楽しみにしていただけるようなお庭になればと願っております。

今回の施工は、決して大規模ではありませんでしたが、限られた条件の中で、施主様のご要望と、庭としての機能性や将来性を両立させることを目指した仕事となりました。水捌けという目に見えにくい土中環境の課題をいかに解決するか、そしてその上で美しい景色をどう築いていくか。そんな課題に向き合う中で、私たちにとっても多くの学びがあった現場でした。今後もひとつひとつの現場に誠実に向き合い、使う人の心に寄り添った庭づくりを心がけてまいります。



着工前
完了
ウッドチップ敷き込み
築山整地
完了
完了
景石設置
着工前
景石搬入
植栽