vol.54 造成地石積み
2022/9/13
皆様こんにちは。清水園でございます。
さて、弊社では代表が石積みを得意としていることもあり、石積みについてお話しさせていただく機会も多くあるのですが…代表曰く「やる予定の石積みと、やる予定の無い石積みがある」との事…果たしてどういうことなのでしょうか。
「今回お話し致しますのは、必然的にやることになった石積み…当初はやる予定がなかったものの、急遽‘やらざるを得ない’状況になり対応した、という現場です。」
そのお言葉を聞くと、非常に危機迫った内容のように伺えるのですが…
「何も怖い現場というわけではございませんからご安心ください。こちらの現場、平成24年頃手がけたものですが、山に土を盛っていた現場で元々法面を作る前に‘石が並んで置いていただけ’の状態だったのですね。
畑を造られるご予定で、施行中水が溜まらないようにする(排水)計画を行う前に、運悪く台風が来てしまい…あちらこちらから水が流れてきて崩れてしまったという次第です。」
確かに…お写真を拝見すると様々な方向から水が流れ込み、一箇所に溜まってしまっている状態なのが見受けられます。
「本来であれば、山道は水が流れて崩れやすいので一番に排水計画を考えなければなりません。山道や斜面など削らなければならない現場は土砂崩れが起きてしまうと全て水の泡になってしまいかねませんからね。このような現場ですとU字溝を入れたりもしますが…場合によって水の流れが速すぎたり流れが集中してしまうと危険性が高まることもございますから、実際とてもデリケートな問題です。」
代表曰く、このような状況で石積みなどを使い自然の流れに合わせた無理のない排水ができるのは、造園の良いところ…との事。近代土木においても効率的で実用的な技術は数多くございますが、それぞれの良いところを適宜採用することが最善かもしれません。
「最終的に石積みを引き受けたものの、現場は雨でなかなかリスクの多い状況でした。本来、雨の中で石積みをすることはおすすめできません。土は柔らかいですし、後日土から水が抜ければ確実に石も下がってしまいます。
雨で濡れた土は重いですから、スコップも足も抜けなくなりますしね…とはいえ、水害が起きる前に対処しなければなりません。現場にあった石となるべく似たようなサイズの石を使いながら石積みを行って参ります。」
小さな石だと土に埋もれて見えなくなってしまうので、多少の水圧や土が埋もれても大丈夫なように大きな石で積むのが確実との事。水を流さないといけないので、石で少しずつ水を止めて池になるようにし、石の隙間からゆっくりと滝のように水が流れるように積んでいくのがポイントのようです。
「石を止める際は土で止めることが多いのですが、この現場は裏込めは玉石や割石で留めております。水が流れるので隙間に土は詰まって参りますが、水の流れをせき止める事がないようある程度隙間を作りながら積んでいきます。」
その甲斐あって、これまで土砂崩れもなく表面には草も生え、石も現場にすっかり馴染んでいます。人の手による石積みがこのように環境を助けることもあるようです。