vol.18 剪定について
2021/7/20
皆様こんにちは。清水園でございます。
さて、6月や7月のこの頃というのは、造園の仕事に携わる人々にとって’繁忙期’にあたる時期でございます。と申しますのも…街路樹・庭木、あらゆる木々が枝葉を伸ばし、その手入れに奔走する時期だから…というのが大きなところ。清水園でもありがたいことに、日々数々の現場へ出向き木々の手入れに取り組んでおります。
代表と現場についてお話を伺う時、やはり得意とされている’石積み’についての内容が中心にはなるのですが、以前仕事道具である’ハサミ’についてお伝えしましたとおり、木々の’剪定’についても代表はポリシーを持っております。本日は代表の思う’剪定について’お話させていただきたいと存じます。
「最近剪定について少し考える現場がありましたので、そこを切り口にお話いたしましょうか…そのお宅は、平成16年頃に私自身が庭を手掛けたお宅でした。諸事情でしばらくその現場には出向かず、他の業者で剪定などを行って管理していたのですが、たまたま再訪した際久しぶりに見たモミジを見た時に…’これは私に手直しさせてほしい’と志願したのですね。」
その件のモミジ。お写真を拝見すると丸みを帯びたシルエットに仕上がっていますが…全体のボリュームと経年で伸びた枝葉が少々気になります。
「丸く刈り込みされて育てられてきたので、このような形になっていますが…本来モミジはこのような形には育ちません。同じモミジでも、別荘のお庭に大きく育つモミジは自然樹形で、その伸びやかな美しさが生かされています。とても対象的な例ですね。」
確かに…同じモミジとは思えない育ち方の違いです。
「こういった違いというのは、当然ですが手を加える’人’によって大きく左右されます。悲しいかな、変に手を加えてしまえば、変な形に育つのはそういったものなのです。庭の管理の上で一番大事なのが’剪定’です。木を育て管理し、それによって木の将来が変わってきます。」
そう、本来木は’自分の形に勝手に伸びるもの’…と代表は語ります。例えば、森に生える木々は人に切られることはなく、自然競争的に伸びていきます。また自ら枯れ枝を作り、枝を落とすことで、ある意味木自身が’自ら剪定を行い’ 本来の形を保ちながら成長の循環を繰り返していきます。
「自然の摂理というのはすごいものです。必ず木は’成長する事’と’庭の大きさが変わらない事’を忘れてはいけません。ですので、我々も木々の成長を見越しての剪定・更新作業を行う必要があります。育った枝を抜いて下の枝を育て、またそれを数年後に繰り返す…すべてが計画的でなければなりません。」
代表が手直ししたというモミジ…最終的には全体の大きさはそのままに、太枝だけを抜いて壁が透けるよう、すっきりと仕上がっています。とはいえ、刈り込みしたとの印象がまだ残っているので、自然樹形に戻すにはあと2・3年はかかるとの事…
森の木などのお話からも、その木が本来持つ形・個性を活かすことの大切さについて気付かされましたが、もちろんその木が’どこに植えられているか’によっても、その剪定の方法が異なってまいります。
「当社のお客様の場合年に1〜2回剪定される方が多いのですが、その場合に’庭の木が邪魔になって…’という施主様のお声がまれにあります。そうなる理由は主に3点あり、一つが’歩くのに邪魔になってぶつかる’。二点目が’壁にあたって壁が汚れる’。三点目に’大きくなりすぎて単純に邪魔になる’。剪定のポイントとしても、先の3点が解決すれば問題ありません。また、年に1〜2回程度剪定することにより、成長を抑制することができます。」
そう、例えば同じ樹木でも’家の前’にあるのか’広い庭’にあるのかでは扱いが変わってまいります。’家の前’であれば、より近くで樹木を楽しむことになりますし通ることにもなりますので、通るスペースを作りハサミなどで細かな部分まで整えて上げる必要があります。
一方で’広い庭’にあり人が通るのに十分なスペースをとることができるのであれば、ノコギリやチェーンソーなどで大きな枝を落とす事で仕上がる現場もあるのです。「その見極めも大切」である、と代表は語ります。
「また、’短く切らなければならないという思考’や’植木屋が自身の技術を過信している’という誤った知識や先入観が残念な仕上がりを招いてしまうことがよくあります。
森の木を例えにお話しましたが、そもそも’木とはそういうもの’と分かっている思考があれば、’木らしさ・自然樹形を大切にする’という剪定になり、木の個性がそのままの美しい形になるのです。
その上で剪定に必要な3点のポイントを押さえてお客様にもお伝えすることで、双方合意の上管理を行うことができます。」
今回、代表が例に上げた現場のお写真は、どれも先述した’自然樹形’に沿った剪定となっています。
また、統一して木の高さは全て変わっておらず透かしただけ。一方で、スペースの少ないお庭かつ大きな木でも’歩くのには邪魔にならない’といった剪定のポイントもクリアされています。日頃、代表が剪定に対しポリシーを持って現場に取り組んでいるかがひしひしと伝わってまいります。
「最後に少し、’ダイスギ’のお話をしておきましょう。このお庭では今回2本ほど根元より抜いて、木漏れ日になるよう透かしています。
もともと’ダイスギ’は、屋根を支える垂木に使われるために細く長く固くなるよう育てられた木です。光合成しにくく、あまり太くならないように、上の方だけに葉をつける仕立て方が特徴的ですね。
このダイスギは樹齢20年ですが、剪定の仕方一つでこういった育ち方をするのです。今は植えているおうちもほとんど見かけませんし、この剪定ができる人も少なくなりました。まさに、植木屋の手で木の将来は左右されますし、技術の継承というのはますます大切になってくると自負しております。
剪定の大切さが、一人でも多くの方に伝わってほしいと祈念してなりません。」
木々の隙間から覗く木漏れ日がまた、周りの木々を育て、循環を繰り返し成長していく…造園家のお仕事の重要さの一端を今回も垣間見たように思います。